交通事故の過失割合とは?弁護士が争い方と修正要素を解説

左は不安そうな男女と紙の資料が飛び交う対比シーン。右はスーツの専門家が手を差し伸べ、解決へ導く場面。

交通事故の過失割合とは?基本を弁護士がわかりやすく解説

交通事故に遭われ、心身ともにお辛い状況の中、保険会社から「過失割合は8対2です」といった連絡を受け、戸惑いや憤りを感じていらっしゃるのではないでしょうか。「なぜこちらにも責任があるのか」「この数字は妥当なのだろうか」と、専門用語が並ぶ説明に、不安ばかりが募っているかもしれません。

まず知っていただきたいのは、過失割合とは、発生した交通事故の責任が、どちらにどれくらいあるかを数字で表したものだということです。そして、この数字は、あなたが最終的に受け取れる賠償金の額に直接影響するとても重要な要素なのです。

例えば、あなたの損害額が合計1000万円だったとします。もし過失割合が「あなた:相手=20%:80%(2対8)」であれば、受け取れる賠償金は800万円(1000万円×80%)になります。しかし、もし過失割合が「10%:90%(1対9)」になれば、受け取れる金額は900万円に増えます。このように、過失割合が10%違うだけで、賠償金は100万円も変わってくるのです。この仕組みを「過失相殺」と呼びます。

保険会社の提示する数字に納得できないと感じるのは、当然のことです。これから、その過失割合がどのように決まり、そして、もし不当だと感じたときにどうすればご自身の正当な権利を守れるのかを、一つひとつ丁寧に解説していきますので、ご安心ください。交通事故の賠償問題全般については、弁護士依頼で慰謝料が増額しうる仕組みの記事で体系的に解説しています。

過失割合は誰がどのように決めるのか

多くの方が「過失割合は警察が決めるもの」と思われているかもしれませんが、それは誤解です。警察は事故の状況を捜査し、実況見分調書などの書類を作成しますが、民事上の責任割合を判断することはありません。これは「民事不介入の原則」があるためです。

では、誰が決めるのか。基本的には、事故の当事者双方(実際には、それぞれが加入している任意保険会社の担当者)の話し合いによって決まります。

そして、その話し合いの際に基準となるのが、過去の膨大な交通事故裁判例を類型化してまとめた『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(通称「別冊判例タイムズ(判タ)」)です。保険会社は、この本に記載された事故類型にあなたの事故を当てはめ、「基本の過失割合」を算出し、提示してくるのです。

つまり、保険会社の提示は絶対的なものではなく、あくまで「判例タイムズ」という基準に基づいた一つの提案に過ぎない、ということを覚えておいてください。

なぜ保険会社の提示に注意が必要なのか

相手方の保険会社が提示する過失割合を、そのまま鵜呑みにするのは危険です。なぜなら、保険会社も営利企業であり、自社が支払う保険金をできるだけ抑えたいという動機が働く可能性があるからです。

具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • あなたに有利な「修正要素」(後ほど詳しく解説します)が見落とされている。
  • 加害者側に有利な解釈で、事故の類型を判断している。
  • 加害者の主張のみを根拠に、過失割合を算出している。

例えば、「相手がウインカーを出さずに右折してきた」という事実があったとしても、それが保険会社の提示する過失割合に反映されていなければ、あなたは不当に低い賠償金しか受け取れないことになってしまいます。「自分のケースも、もしかしたら…」と感じたなら、安易に示談に応じる前に、その提示が本当に正しいのかを主体的に確認することが何よりも大切です。

過失割合の基準「判例タイムズ」の正しい見方と活用法

保険会社との交渉の土台となる「判例タイムズ」。これは、単なる参考資料ではなく、実際の裁判で裁判官も参考にする、非常に信頼性の高い基準書です。この本の構造を理解することが、相手の提示を正しく検証する第一歩となります。

判例タイムズでは、例えば「交差点における直進車と右折車の事故」「駐車場内の事故」といったように、様々な事故の状況が類型化され、それぞれに図解付きで「基本過失割合」が示されています。例えば、「信号機のある交差点で、青信号で直進した車(あなた)と、対向車線から右折してきた車(相手)の事故」であれば、基本過失割合は「あなた:相手=20:80」といった具合です。

交通事故の過失割合が「判例タイムズ」を基準に、個別の「修正要素」を加味して決定されるプロセスを示した図解。

そして、この基本割合に、個別の事故状況に応じた「修正要素」というものを加算したり、減算したりして、最終的な過失割合を導き出します。保険会社の担当者は、このプロセスを経てあなたに割合を提示しているのです。ですから、あなたがすべきことは、まず「自分の事故がどの類型に当てはまるのか」、そして「保険会社が見落としている有利な修正要素はないか」という視点で、提示された根拠をチェックすることにあります。

あなたの過失割合を変える「修正要素」とは?

修正要素とは、基本となる過失割合に加算・減算される、個別の具体的な事情のことです。相手の運転に特に危険な点があった場合や、あなたが交通弱者である場合などに適用され、過失割合が10%〜20%程度変動することもあります。ここでは、代表的な修正要素を見ていきましょう。

特に重要なのが、相手方の「著しい過失」と「重過失」です。

  • 著しい過失:わき見運転、スマートフォンの操作、時速15km以上30km未満の速度違反など、通常想定されるレベルを超える不注意。過失割合が10%程度加算されることが多いです。
  • 重過失:居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反など、故意に近い悪質な違反。過失割合が20%程度加算されることがあります。

これらの要素は、あなたの過失割合を減らし、最終的に受け取る賠償金を増額させるための重要なカードになります。

【加算】相手の過失が大きくなる主な修正要素

相手方の過失を大きくし、あなたの過失を小さくできる可能性のある、代表的な修正要素は以下の通りです。相手の運転を思い出してみてください。

  • 著しい過失:脇見運転、携帯電話を使用しながらの運転、カーナビの注視など
  • 重過失酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、30km以上の速度違反など
  • ウインカー(合図)なしの右左折・車線変更
  • 夜間の無灯火
  • 急ブレーキ
  • 交差点での直近右折(直進車のすぐ目の前で右折する危険な行為)

もし、相手の運転にこれらの行為があった場合、それを客観的な証拠で示すことができれば、交渉を有利に進めることができます。

【減算】自分の過失が小さくなる主な修正要素

一方で、あなたの過失が小さくなる(つまり、相手の過失が加算される)要素もあります。ご自身の状況が当てはまらないか確認してみましょう。

  • あなたが交通弱者である場合:歩行者、自転車、バイクは自動車との事故において保護される傾向にあります。また、運転者が児童・高齢者・障がい者である場合も、過失が小さく評価されることがあります。
  • 相手が大型車である場合:大型車は普通車よりも事故の危険性が高いため、過失が大きく評価されることがあります。
  • 相手車両の明らかな先入:あなたが交差点に進入する前に、相手の車が明らかに先に交差点に入っていた場合など。
  • 相手にその他の法令違反があった場合:右折禁止違反、センターラインオーバーなど。

これらの要素は、保険会社の担当者が見落としがちなポイントでもあります。ご自身の状況を多角的に見直すことが重要です。

過失割合の争い方|証拠の集め方と交渉の進め方

保険会社の提示する過失割合に納得できない場合、感情的に「おかしい」と主張するだけでは、残念ながら状況は変わりません。相手は交渉のプロです。彼らを納得させるには、客観的な「証拠」がすべてです。証拠がなければ、あなたの主張は「言った、言わない」の水掛け論で終わってしまい、不本意な結果を受け入れざるを得なくなる可能性があります。

ここからは、過失割合を争うための具体的な武器、つまり証拠の集め方と、それをどう交渉で活かすかについて解説します。

最重要証拠!ドライブレコーダーの戦略的活用法

今や、過失割合の交渉において最も強力な武器となるのが、ドライブレコーダーの映像です。事故の瞬間を客観的に記録した映像は、何よりも雄弁に真実を語ります。

ドライブレコーダーの映像を確認する際は、以下のポイントに注目してください。

  • 信号の色:衝突時の信号が青だったのか、黄色だったのか、赤だったのか。
  • ウインカーの有無:相手が車線変更や右左折の際に、適切にウインカーを出していたか。
  • 衝突の瞬間:どちらの車両が、どの部分に、どのような角度で衝突したか。
  • 相手の速度:映像から、相手が明らかに速度超過している様子はうかがえないか。
  • 一時停止の有無:相手が一時停止の標識を無視していないか。

事故に遭ったら、まずはSDカードを抜き取り、すぐにパソコンなどにデータをコピーして保全してください。上書きされて証拠が消えてしまうのを防ぐためです。

もし相手がドラレコ映像の提出を拒んだとしても、諦める必要はありません。弁護士を通じて「弁護士会照会」という手続きをとったり、裁判になった場合には「文書提出命令」を申し立てたりすることで、映像を開示させられる可能性があります。

ドラレコがない場合に集めるべき5つの代替証拠

「ドライブレコーダーを付けていなかった…」と諦めるのはまだ早いです。不利な状況を覆すための代替証拠は存在します。以下の5つの証拠を集められないか、検討してみてください。

  1. 実況見分調書:警察が作成する、事故現場の状況を詳細に記録した公的な書類です。ブレーキ痕の位置や長さ、車両の最終停止位置など、事故状況を客観的に示す情報が詰まっています。入手方法は事件の処理状況(起訴・不起訴など)によって異なりますが、不起訴処分後であれば検察庁で入手できる場合があります。詳しくは法務省の不起訴事件記録の開示についてのページも参考にしてください。
  2. 車両の損傷写真:車のどの部分が、どれくらい壊れているかは、衝突の角度や速度を推測する上で重要な手がかりとなります。修理に出す前に、必ず様々な角度から写真を撮っておきましょう。
  3. 防犯カメラの映像:事故現場近くのコンビニや店舗、個人宅の防犯カメラに、事故の様子が映っている可能性があります。時間が経つと映像が消去されてしまうため、できるだけ早く所有者に連絡し、映像の提供を依頼しましょう。
  4. 目撃者の証言:事故現場に居合わせた第三者の証言は、非常に有力な証拠となり得ます。もし目撃者がいる場合は、すぐに連絡先を交換し、後日、証言を「陳述書」という法的に有効な書面にしてもらうようお願いしましょう。
  5. 事故鑑定人による分析:どうしても証拠が乏しい場合は、交通事故鑑定の専門家に依頼し、車両の損傷状況などから事故状況を科学的に再現してもらうという方法もあります。

【弁護士の実例】証拠を武器に過失割合を覆したケース

弁護士がドライブレコーダーの映像を緻密に分析し、交通事故の証拠を探している様子。

私が過去に扱った事例で、主張が真っ向から対立し、絶体絶命とも思える状況から逆転勝訴を果たしたケースがあります。

ご相談者様は、相手方の車がセンターラインをはみ出して衝突してきたと主張されていました。しかし、相手方は「ご相談者様こそが車線を踏み越えてきた」と言い張り、過失割合は0対100どころか、100対0だと主張してきたのです。

当然、交渉では埒が明かず、訴訟へと発展しました。相手の主張はあまりに理不尽でしたが、それを覆す客観的な証拠がなければ、裁判所を説得することはできません。

まず、私は自ら事故現場に赴き、道路の幅やカーブの形状などをつぶさに写真に収めました。そして、道路の構造上、ご相談者様がセンターラインをはみ出して走行すること自体が極めて不自然であることを、証拠として積み上げていきました。

次に取り組んだのが、ドライブレコーダーの解析です。保険会社から取り寄せた映像をただ再生しただけでは、衝突の瞬間は一瞬で、どちらがはみ出したのか判然としませんでした。正直、一見しただけでは、こちらに不利に働く可能性すら感じたほどです。

しかし、ここで諦めるわけにはいきません。私は、その動画をパソコンに取り込み、0.5秒単位の静止画に切り出すという、地道な作業を始めました。一枚、また一枚とコマ送りで検証していくと…ついに、相手方のタイヤがセンターラインを越え、こちら側の車線に侵入してくる決定的な瞬間を捉えることができたのです。

この静止画をスライド形式で証拠として提出し、現場写真と合わせて相手の主張の矛盾を突いた結果、裁判所はこちらの主張を全面的に認め、過失割合0対100での勝訴判決を勝ち取ることができました。この事例は、たとえ状況が不利に見えても、地道な証拠収集と専門的な分析によって、真実を証明できるという何よりの証です。

過失割合の交渉が決裂したら?知っておくべき3つの選択肢

保険会社との交渉が平行線をたどり、どうしても合意に至らない場合、次のステップとして法的な解決手続きを検討することになります。主な選択肢は以下の3つです。

  1. 交通事故紛争処理センター(ADR)
    弁護士などの専門家が中立な第三者として間に入り、和解のあっせんをしてくれる機関です。無料で利用でき、比較的スピーディーな解決が期待できます。ただし、相手が和解案を拒否した場合は強制力がありません。
  2. 民事調停
    裁判所で、裁判官と調停委員を介して話し合い、合意による解決を目指す手続きです。調停が成立すれば、その内容は判決と同じ効力を持ちます。
  3. 民事訴訟(裁判)
    最終的な司法判断を求める手続きです。判決には強制力があり、相手が支払いに応じない場合は強制執行も可能です。しかし、解決までに時間がかかり、弁護士費用も高くなる傾向があります。また、必ずしも勝訴できるとは限らないというリスクも伴います。

どの手続きを選択すべきかは、事案の複雑さや証拠の状況によって異なります。どの方法がご自身のケースにとって最適か、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。賠償金そのものの交渉については、慰謝料の増額交渉に関する記事もご参照ください。

参照:公益財団法人 交通事故紛争処理センター

過失割合でお悩みなら弁護士への相談が解決の近道です

ここまで過失割合の争い方について解説してきましたが、相手は日々、交通事故案件を処理している保険会社の担当者、つまり「交渉のプロ」です。専門知識や交渉経験のない個人が、プロを相手に対等に渡り合うのは、残念ながら極めて困難と言わざるを得ません。

交通事故の過失割合の問題が解決し、弁護士に感謝して握手をする依頼者。

もしあなたが、保険会社の提示に納得できず、正当な権利を主張したいと強く願うのであれば、弁護士に相談することは、状況を整理し、適切な解決を目指すうえで有力な選択肢の一つです。

私たち弁護士が介入することで、あなたには以下のようなメリットがあります。

  • ①適正な過失割合の主張:過去の判例や専門知識に基づき、あなたに最も有利な過失割合を論理的に主張します。
  • ②証拠収集の強力なサポート:ドライブレコーダーの解析や、実況見分調書の取り寄せなど、専門的な証拠収集を代行・サポートします。
  • ③交渉のストレスからの解放:精神的な負担が大きい保険会社とのやり取りをすべて弁護士に任せ、あなたは治療に専念できます。
  • ④弁護士基準による賠償金増額:過失割合だけでなく、慰謝料なども裁判基準(弁護士基準)で請求するため、事案によっては最終的に受け取れる賠償金が増額する可能性があります。

当事務所は、ただ守るだけでなく、ご依頼者様が前へ進むために積極的に闘う「攻めの弁護」を信条としています。納得できない状況に泣き寝入りするのではなく、私たちと一緒に、あなたの正当な権利を勝ち取りましょう。ぜひ、信頼できる弁護士を見つけてご相談ください。

弁護士費用特約が使えれば自己負担は原則0円

「弁護士に頼みたいけれど、費用が心配…」という方も多いでしょう。しかし、その心配は無用かもしれません。ぜひ、ご自身の自動車保険の契約内容を確認してみてください。

「弁護士費用特約」が付いていれば、保険会社が弁護士費用を一定の上限まで負担してくれるため、自己負担が発生しない(または小さく抑えられる)場合があります。上限額は保険会社や契約内容によって異なりますが、一般的には法律相談料10万円・弁護士費用300万円が目安とされています。

この特約は、ご自身の自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険に付帯している場合もあります。また、契約者本人だけでなく、同居のご家族や、契約車両に同乗していた方も利用できるなど、対象範囲が広いのも特徴です。さらに、弁護士費用特約を利用しても、自動車保険の等級は下がらず、翌年以降の保険料が上がることもありません。

まずはご自身の保険証券を確認し、特約の有無をチェックしてみてください。もし利用できるのであれば、費用を気にすることなく、専門家のサポートを受けることができます。過失割合に関するお悩みは、一人で抱え込まず、ぜひ一度、私たちにご相談ください。

過失割合の無料相談(お問い合わせ)

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