事件別弁護方針

覚せい剤、大麻等薬物犯罪

覚せい剤、大麻などに代表される薬物関連犯罪は、被害者がいない犯罪です。そのため示談交渉などはできません。薬物を使用してしまう犯罪は、「やめたくてもやめられない」という、ある意味病気的な側面があると思います。

病気なのであれば、刑務所に行くよりも専門の施設で治療をすることが効果的です。弁護士は、薬物による依存症専門の医療機関や更生プログラムの支援センターと連携し、依頼者に依存症の治療を促します。

裁判所に対しては、治療の必要性、実効性をアピールするといった弁護方針をとります。また、薬物の密売人との連絡を断ち切り、保釈等の早期の身柄解放に努めます。

盗撮、不同意わいせつ、不同意性交などの性犯罪

性犯罪は、被害者がいる犯罪です。そこで、示談成立をめざすのが有効な弁護方針となります。しかし、性犯罪は、被害者が負った心の傷は甚大であるため、一筋縄ではいかないところがあります。

また、被害者が未成年の場合には、その親権者である両親と交渉する必要があります。弁護士は、依頼者が真摯に反省していることを被害者に伝えるとともに、被害者が一番懸念している、再度の接触や再犯のおそれはないことをアピールして示談交渉を行います。

また、性犯罪も薬物と同じく依存症の側面があるため、必要であればその治療プログラムも検討します。

なお、性犯罪といっても非常に数が多いので、代表的な性犯罪をかんたんにまとめます。

① 露出(人前で性器を露出したりする場合)

公然わいせつ罪(刑法174条)「6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留若しくは科料」

② わいせつ物の頒布(わいせつな写真・映像などを頒布・販売・公然と陳列した場合)

わいせつ物頒布等罪「(刑法175条)「2年以下の懲役または250万円以下の罰金」

③ のぞき 

軽犯罪法違反「拘留・科料」(1か月未満の身体拘束or1000円以上1万円未満の金銭の納付)

④ 盗撮

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」

⑤ストーカー

ストーカー規制法違反「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」

⑥ 児童ポルノの所持

児童買春・児童ポルノ禁止法「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」

⑦ 痴漢

迷惑防止条例違反 福岡県の場合「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」

⑧ 児童売春

児童買春・児童ポルノ禁止法「5年以下の懲役または300万円の罰金」

⑨ 同意を得ないわいせつ行為

不同意わいせつ罪(刑法176条)「6カ月以上10年以下の拘禁」

⑩ 同意を得ない性交

不同意性交罪(刑法177条)「5年以上の拘禁」

⑪ 同意を得ないわいせつ行為等をした結果、相手方が死傷した場合

不同意わいせつ等致死傷罪(刑法181条)「無期または3年以上の懲役」

※ 不同意性交の場合は無期または6年以上の懲役

※ 不同意わいせつ、不同意性交罪の新設

2023年6月23日の刑法改正で、従来の強制性交等罪と準強制性交等罪が、不同意性交等罪と名称変更がなされ、処罰対象となる8つの具体的な行為が例示されました。

しかし、性交は通常密室において行われることから、性交時に相手方に真に同意があったかを、事後的に確かめることは非常に難しく、その構成要件もいまだ不明確な点も多いことから、処罰されるべきでない事例において処罰がなされるおそれがあることが非常に懸念されるところです。

すなわち、性交時は同意していたが、事後的に「同意はしていなかった」として被害届を出されるリスクがあります。おそらく、処罰されるべきでない事例において、同罪の適用を完全に回避することは不可能に近いのではないかと感じております。

そのため、関係性が希薄な相手と性交する機会があった際には十分に注意する必要があるとともに、同罪の構成要件を頭に入れておく必要があります。そのため同罪の条文を載せておきます。


(不同意わいせつ)

第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。


(不同意性交等)

第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。

2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

窃盗、強盗、詐欺、恐喝などの財産犯

財産犯は、被害者に財産的な損失を与えてしまっているのですから、その財産を賠償すること、すなわち被害弁償(示談)をすることが弁護方針となります。

しかし、被害者が店舗や会社などの組織である場合には、組織の方針として被害弁償を受け付けないといった事態もあります。

その場合、弁護士は、謝罪文作成や示談経過の報告書を作成して、依頼者に被害弁償の意思があることをアピールすることはもちろん、場合によっては、被害弁償金の法務局への供託や、贖罪寄付(被疑者・被告人が、罪を認め、深く反省している思いを形にするため、一定の金額を公益団体などに寄付すること)をすることも検討します。

暴行、傷害、過失運転致死傷など、人が負傷した犯罪

これらの犯罪も、被害者がいるわけですから、やはり示談をすることが弁護方針となります。被害者は、大変な恐怖を感じていたり、激怒していたりと、事件によって様々ですから、弁護士は被害者の思いに寄り添い、慎重に示談をすすめていく必要があります。

なお、過失運転致死傷罪は、車を運転していて人を負傷させた場合ですので、依頼者の方が加入している車の任意保険により被害者の治療費や慰謝料、休業損害などは支払われることがほとんどです。

弁護士としては、保険会社によって、被害者の賠償がきちんと済んでいることをアピールするとともに、加害車両の廃車登録や運転免許取消処分の結果などを証拠化して、裁判所に情状の事情としてアピールすることになります。

無罪を主張する場合(冤罪事件)

無罪を主張する場合の弁護方針は、自白調書を取らせないことが重要です。

警察や検察は、さまざまな方法で自白を取ろうとしてきます。強圧的な態度で取り調べをしたり、「罪を認めないと刑務所に行くことになる」と脅してきたりする可能性もあります。

いったん自白調書が作成されてしまいますと、裁判でそれを覆すのは非常に難しいですので、捜査段階では、完全黙秘をすることも弁護戦術の一つです。

弁護士は、依頼者と、取り調べに際しての打ち合わせを徹底して行います。また、被疑者ノートを依頼者に差し入れ、警察官の発言をメモしてもらいます。警察官の違法・不当な発言がある場合には、警察署に対し、徹底的に抗議します。

私がこれまで取り扱った冤罪事件(すべて無罪主張)では、痴漢事件で不起訴処分、不同意わいせつ罪で不起訴処分、放火事件で不起訴処分をそれぞれ勝ち取ったことがあります。

   

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