民事再生後の支払いが困難な時の対処法|弁護士が解説

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民事再生後の支払いが困難に…まず知るべきこと

民事再生手続きを経て、裁判所から再生計画の認可決定を受け、ようやく再スタートを切った矢先、「会社の業績が悪化して収入が減ってしまった」「家族が病気になり、急な出費がかさんでしまった」といった予期せぬ事態に見舞われ、計画どおりの返済が難しくなってしまう…。そんな状況に、強い不安と焦りを感じていらっしゃるのではないでしょうか。

再生計画に基づく返済は、原則として3年、最長で5年と長期にわたります。その間に生活状況が変化し、支払いが困難になることは、決して珍しいことではありません。しかし、一番まずいのは、「どうにもならない」と一人で抱え込み、返済を放置してしまうことです。

何もせずに放置してしまうと、最悪の場合、せっかく認められた再生計画が取り消され、減額されたはずの借金が元に戻ってしまう可能性があります。しかし、ご安心ください。民事再生の制度には、このような不測の事態に備えた、法的に認められた救済策がきちんと用意されています。

この記事では、民事再生後の返済が困難になった場合の具体的な対処法について、弁護士が専門的な視点から分かりやすく解説します。この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況でどのような選択肢があり、次に何をすべきかが明確になるはずです。民事再生の全体像については、民事再生の基本的な仕組みで体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

返済を放置した場合に起こる最悪の事態とは?

再生計画どおりの返済が難しいからといって、そのまま放置してしまうことは最も避けるべき選択です。一度や二度の滞納で直ちに再生計画が取り消されるわけではありませんが、状況は確実に悪化していきます。最悪の事態は、債権者から「再生計画の取消し」を申し立てられてしまうことです。

民事再生の返済計画が滞り、頭を抱えて悩んでいる男性のイラスト

債権者による「再生計画の取消申立て」の要件

債権者は、いつでも自由に再生計画の取消しを申し立てられるわけではありません。これには、民事再生法第189条で定められた厳しい要件があります。

具体的には、再生計画の履行を怠った場合に、「再生計画で認められた権利の総額の10分の1以上に当たる権利を持つ債権者」が申立てを行う必要があります。つまり、一人の債権者だけではこの「10分の1」という要件を満たせない場合、他の債権者と協力して共同で申し立てなければ、裁判所は取消しの手続きを開始しません。

この要件があるため、債権者側も簡単には取消しの申立てができないのが実情です。しかし、だからといって安心はできません。返済の遅延が続けば、複数の債権者が共同で行動を起こすリスクは高まっていきます。

再生計画が取り消されるとどうなるのか

もし再生計画が取り消されてしまうと、民事再生によって得られたメリットはすべて失われてしまいます。最も大きな影響は、減額された借金が元の金額に戻ってしまうことです。それだけでなく、再生計画認可決定後の遅延損害金も加算され、一括で請求される可能性もあります。

そうなると、債権者は元の借金額に基づいて、給与の差し押さえなどの強制執行といった法的手続きを取ることが可能になります。生活再建のために利用した民事再生の効果が失われるおそれがあります。このような最悪の事態を避けるためにも、早期の対応が不可欠です。

【対処法1】再生計画の変更で返済期間を延長する

返済が困難になった場合の、最も現実的で一般的な解決策が「再生計画の変更」です。これは、返済総額はそのままに、返済期間を延長することで月々の返済額を減らし、負担を軽くする手続きです。

例えば、残り100万円の返済を1年で支払う計画だった場合、月々の返済額は約8.3万円ですが、これを2年延長して合計3年で支払う計画に変更できれば、月々の返済額は約2.7万円まで軽減できます。この制度を利用することで、現在の収入状況に合わせた無理のない返済計画へと見直すことが可能になります。

再生計画の変更による返済期間延長と月々の返済額軽減の仕組みを示した図解

再生計画の変更が認められるための3つの要件

ただし、誰でも簡単に再生計画を変更できるわけではありません。民事再生法第234条に基づき、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 再生債務者自身が申し立てること
    裁判所が職権で計画を変更してくれることはありません。必ず、ご自身の意思で裁判所に申立てを行う必要があります。
  2. 「やむを得ない事由」で再生計画の遂行が「著しく困難」になったこと
    「やむを得ない事由」とは、ご自身の責任とはいえない事情を指します。例えば、会社のリストラによる解雇、業績不振による給与カット、本人や家族の病気による医療費の増大などが典型例です。一方で、浪費やギャンブル、自己都合での退職などは「やむを得ない事由」とは認められにくいでしょう。
  3. 延長できる期間は最大2年まで
    変更後の最終弁済期は、元の再生計画で定められていた最終弁済期から2年を超えない範囲で設定する必要があります。無期限に延長できるわけではない点に注意が必要です。

再生計画変更の手続きの流れと注意点

再生計画の変更手続きは、ご自身で裁判所に申立書を提出することから始まります。その後、裁判所が必要と判断すれば個人再生委員が選任され、債権者から意見を聴いたり、書面による決議を行ったりします。最終的に、裁判所が計画変更を認めるかどうかを判断し、認可決定が出されるという流れです。

この手続きには数ヶ月の期間がかかるのが一般的です。注意点として、変更の申立てをしている間も、原則として元の計画に基づく返済は続けなければなりません。もし返済を完全にストップしてしまうと、その間に債権者から再生計画の取消しを申し立てられてしまうリスクがあります。返済が難しい状況であっても、弁護士に相談の上、誠実な対応を続けることが重要です。

【対処法2】ハードシップ免責で残りの返済を免除してもらう

「再生計画の変更」では対応できないほど状況が悪化してしまった場合の最終手段として、「ハードシップ免責」という制度があります。これは、裁判所に認めてもらうことで、残っている借金の支払いがすべて免除されるという非常に強力な効果を持つ制度です。

しかし、その効果が強力な分、認められるための要件は極めて厳しく設定されています。誰でも利用できる制度ではないことを、まずご理解いただく必要があります。

ハードシップ免責が認められるための厳しい5つの要件

ハードシップ免責が認められるためには、民事再生法第235条・第244条に定められた要件を満たさなければなりません。

  1. 再生債務者の責任ではない事由で、再生計画の遂行が「極めて困難」になったこと
    再生計画の変更で求められる「著しく困難」よりも、さらにハードルが高くなります。
  2. 基準債権等について4分の3以上の弁済を終えていること
    再生計画による変更後の基準債権等について、4分の3以上の弁済を終えている必要があります。また、非減免債権のうち、民事再生法156条の一般的基準に従って弁済される部分についても、4分の3以上の弁済を終えていることが必要です。例えば、500万円の借金を100万円に圧縮し、3年(36回)で返済する計画の場合、少なくとも75万円以上(27回分以上)の返済が終わっていなければ、原則としてこの制度を利用できません。
  3. 免責の決定が、債権者全体の利益に反しないこと
    これは「清算価値保障原則」とも呼ばれ、もし債務者が自己破産した場合に債権者に分配されるであろう金額(清算価値)以上の返済は、すでに行っている必要がある、という意味です。
  4. 再生計画の変更をすることが極めて困難であること
    返済期間を2年延長しても、やはり返済の目途が立たない、という状況が求められます。
  5. 再生債務者自身が申し立てること
    こちらも、ご自身での申立てが必要です。

ハードシップ免責のメリットと注意すべき点

最大のメリットは、言うまでもなく残りの借金の支払いが免除されることです。しかし、注意すべき重大な点があります。

それは、住宅ローン特則を利用して自宅を残している場合です。ハードシップ免責を受けると、再生計画の対象となっていた他の借金だけでなく、住宅ローンの支払いも免除されます。その結果、金融機関は抵当権を実行し、最終的に自宅を失ってしまう可能性が非常に高くなります。大切なマイホームを守るために個人再生を選んだ方にとっては、本末転倒の結果になりかねません。詳しくは、個人再生における住宅ローン特則をご覧ください。

また、免責が確定してから7年間は、再度自己破産の免責許可を受けたり、給与所得者等再生を利用したりすることができなくなるという制限もあります。

ハードシップ免責が認められるための5つの厳しい要件をまとめたインフォグラフィック

再生計画の変更も免責も困難な場合の選択肢

では、再生計画の変更も難しく、ハードシップ免責の要件(特に4分の3以上の返済)も満たせない場合は、どうすればよいのでしょうか。対応が難しい状況に見える場合でも、他の手続を検討できる可能性があります。

その一つが、「自己破産」への切り替えです。民事再生の手続きを進めていた方が、自己破産を申し立てることは法的に何の問題もありません。自己破産が認められれば、原則としてすべての借金の支払いが免除されます。ただし、民事再生では守ることができたであろう自宅などの財産は、原則として手放さなければならないという大きなデメリットがあります。ご自身の状況にとって、民事再生と自己破産のどちらが適切かを慎重に判断する必要があります。

また、状況によっては「任意整理」という選択肢も考えられます。これは、裁判所を通さず、弁護士が個別の債権者と直接交渉し、将来の利息のカットや返済計画の見直しを行う手続きです。債権者の数が少ない場合や、特定の高金利の債権者への返済だけが負担になっているようなケースでは、有効な解決策となる可能性があります。

弁護士による実務上の見解とアドバイス

ここまで、再生計画が困難になった場合のいくつかの対処法を見てきました。これらの選択肢の中で、実務上、どのような判断がなされることが多いのでしょうか。

正直なところ、ハードシップ免責は「4分の3以上の返済」という要件が非常に厳しく、実際に利用できるケースはかなり限定されます。そのため、多くの場合はまず「再生計画の変更」が可能かどうかを検討することになります。

ハードシップ免責が認められれば、再生計画上の借金は支払う必要がなくなります。しかし、注意点として、再生計画が認可された後に新たに借り入れたお金は「再生債権」ではないため、免責の対象にはなりません。もし、そうした新しい借金も含めてすべてを免除してもらいたいのであれば、改めて自己破産を申し立てる必要があります。

どの手続きが適切かは、残っている借金の額、返済を終えた期間、現在の収入や資産の状況、そして「自宅などの財産を守りたいか」といったご自身の希望によって異なります。

「自分の場合はどの方法が使えるのだろう…」と一人で悩み続けるのは、精神的にも大きな負担ですし、時間が経つほど選択肢が狭まってしまう可能性もあります。返済が少しでも「苦しい」と感じ始めたら、できるだけ早く弁護士にご相談ください。専門家として状況を客観的に分析し、状況に応じた対応方針を検討し、手続の進め方について具体的にサポートいたします。まずは信頼できる弁護士を見つけることから始めてみませんか。


参照:民事再生法 | e-Gov法令検索

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