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もしかして減額できる?不貞慰謝料を請求された時の確認点
ある日突然、不貞行為(不倫・浮気)の慰謝料を請求する内容証明郵便が届いたら、誰でも冷静ではいられないでしょう。「どうしよう、人生が終わってしまう…」「言われるがままに支払うしかないのか…」と、パニックになってしまうのも無理はありません。
しかし、どうか落ち着いてください。請求された金額を、すぐに全額支払わなければならないと決まったわけではありません。特に、あなたとお相手との関係が「意に沿わないもの」であった場合など、事情によっては慰謝料を大幅に減額できる、あるいは支払う必要がなくなる可能性も十分にあります。
この記事では、不貞慰謝料の減額が認められる可能性のある5つのケース、特に「意に沿わない性交渉」がなぜ減額につながるのか、そして実際に減額を勝ち取るための交渉の進め方について、弁護士が分かりやすく解説します。
高額な慰謝料請求に一人で悩まないでください。この記事を読めば、あなたが今何をすべきか、そして未来への一歩を踏み出すための道筋が見えてくるはずです。

不貞慰謝料が減額・免除される5つのケース
不貞慰謝料が請求されるのは、不貞行為が「不法行為」にあたり、それによって夫婦関係の平和という法的な利益が侵害された、と考えられるためです。しかし、状況によっては、この「不法行為」が成立しなかったり、影響が小さかったりする場合があります。ここでは、慰謝料が減額または免除される代表的な5つのケースを見ていきましょう。
ケース1:意に沿わない性交渉だった(心理的強制・セクハラ)
本記事で最もお伝えしたい重要なケースです。不貞行為が、あなたの自由な意思に基づいたものではなかった場合、慰謝料が大幅に減額、または免除される可能性があります。
不法行為が成立するためには、加害者に「故意・過失」があったことが必要です。しかし、以下のような状況では、この「故意(わざと)」の部分が否定される、あるいは非常に弱いと判断されることがあるのです。
- 職場の上司や取引先の担当者など、力関係で逆らえない相手から強引に関係を迫られた。
- 「断ったら仕事で不利益な扱いをする」などと脅され、断ることができなかった。
- 日常的なセクハラや精神的な圧迫を受けており、正常な判断ができない状態だった。
このようなケースは、もはや恋愛関係ではなく、セクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)の問題です。「断れなかった自分も悪い」とご自身を責める必要はありません。法的には、あなたの「意思の自由」が侵害された結果であり、慰謝料を支払う義務がない、または著しく減額されるべき状況といえる可能性があります。
ケース2:相手が既婚者だと知らなかった(過失がない)
不貞行為の相手が、既婚者であることを隠してあなたと交際していた場合も、「故意・過失」が否定される典型的な例です。
例えば、以下のような状況です。
- マッチングアプリで「独身」と偽っていた。
- 「妻とはとっくに別れた」と嘘をつかれていた。
- 一人暮らしをしており、既婚者だと疑う余地がなかった。
ただし、「知らなかった」と主張するだけでは不十分です。「知らなかったことについて、あなたに落ち度(過失)がない」ことまで必要になります。例えば、相手の言動に不審な点があったにもかかわらず確認を怠った場合などは、過失があったと判断される可能性もあります。相手が独身だと信じさせるための具体的な言動の証拠(メッセージなど)が重要になります。
ケース3:不貞前から夫婦関係が破綻していた
不貞慰謝料は、不貞行為によって「平穏な婚姻共同生活」が壊されたことに対する償いです。ということは、あなたがお相手と関係を持つ以前から、すでにお相手の夫婦関係が壊れていた(破綻していた)場合、守られるべき「平穏な婚姻生活」が存在しないため、慰謝料は発生しないか、大幅に減額されることになります。
裁判で「破綻」が認められやすいのは、以下のような客観的な事実がある場合です。
- 長期間にわたって別居している。
- 夫婦間で離婚調停や離婚訴訟が進められている。
- 家庭内別居状態が続き、夫婦としての実態(会話や性交渉など)が全くない。
ただし、「夫婦喧嘩が絶えなかった」「相手から『離婚したい』と聞いていた」という程度では、法的に「破綻」と認められないケースも多いため、専門的な判断が必要です。
ケース4:請求額が慰謝料の相場より著しく高い
慰謝料を請求する側は、精神的な苦痛から感情的になり、法的な相場を大きく超える金額を請求してくることがあります。しかし、請求されたからといって、その全額を支払う義務はありません。
不貞慰謝料の裁判上の相場は、様々な事情を考慮して決まりますが、おおよその目安は以下の通りです。
| 状況 | 慰謝料の相場 |
|---|---|
| 不貞が原因で離婚した場合 | 100万円~300万円程度 |
| 離婚はしないが、夫婦関係が悪化した場合 | 50万円~100万円程度 |
請求額がこの相場から著しくかけ離れている場合は、その点を指摘し、適切な金額への減額を交渉することが可能です。

ケース5:その他(不貞期間が短い、社会的制裁など)
上記のケース以外にも、以下のような事情は慰謝料の減額事由として考慮される可能性があります。
- 不貞の期間・頻度: 肉体関係が一度きりだった、交際期間が数週間程度と非常に短いなど。
- 謝罪や反省の態度: 誠心誠意、謝罪の気持ちを伝えている。
- 社会的制裁の有無: 不貞が原因で会社を退職せざるを得なくなったなど、すでに社会的制裁を受けている。
- 相手からの積極的な誘い: 不貞の相手側が主導して関係が始まった。
これらの事情を一つひとつ丁寧に主張していくことで、最終的な支払額を減らせる可能性があります。諦めずに、ご自身の状況で主張できることがないか、しっかりと検討することが大切です。
【弁護士の解決事例】意に沿わない関係で慰謝料0円を達成
ここで、当事務所が実際に取り扱った事例をご紹介します。この事例は、「意に沿わない関係」がいかに慰謝料減額において重要なポイントとなるかを示しています。
ご相談に来られたのは、300万円もの不貞慰謝料を請求されてしまった女性でした。彼女の表情は憔悴しきっており、「もうどうしていいか分からない」と、か細い声で話し始めました。
詳しくお話を伺うと、不貞相手は職場の上司。その上司は、職務上の立場を利用して、執拗に彼女に迫ってきたのです。「言うことを聞かなければ、このプロジェクトから外す」といった趣旨の発言もあり、彼女は断れば自分のキャリアが閉ざされてしまうという恐怖から、やむなく関係に応じてしまったとのことでした。
これは、単なる不貞行為ではありません。職場における力関係を背景とした、悪質なセクハラ事案です。彼女の心は、罪悪感よりも、恐怖と理不尽さで深く傷ついていました。
私は、この点を交渉の最大の軸に据えました。相手方の弁護士に対し、「これは自由な意思に基づく関係ではなく、依頼者の意思が著しく抑圧された状況下で行われたものである。したがって、不法行為の成立要件である『故意』は認められない」と強く主張しました。
最初は強気だった相手方も、こちらが具体的な状況を詳細に指摘し、セクハラとしての責任追及も辞さない姿勢を示すと、徐々に態度を軟化させていきました。最終的に、当事務所の交渉の結果、依頼者様が慰謝料を支払うことなく解決に至りました(事案により結果は異なります)。解決の報告をした時の、彼女の心からの安堵の表情は、今でも忘れられません。
このように、意に沿わない性交渉であったケースでは、慰謝料を大幅に減額、あるいはゼロにできる可能性があるのです。

慰謝料減額を成功させる交渉の進め方と注意点
では、実際に慰謝料の減額を求める場合、どのように行動すればよいのでしょうか。正しいステップを踏むことが、有利な解決への鍵となります。
ステップ1:請求内容を正確に把握する
多くの場合、慰謝料請求は「内容証明郵便」という書式で送られてきます。物々しい書面に驚き、すぐに電話をかけたり、返事を書いたりしたくなる気持ちは分かりますが、まずは冷静に書面の内容を隅々まで確認しましょう。
- 誰が、誰に請求しているのか(請求者の氏名、代理人弁護士の有無)
- いくらを請求しているのか(請求金額)
- いつまでに支払うよう求めているのか(支払期限)
- どのような事実を根拠に請求しているのか(不貞行為の日時、場所など)
相手の主張を正確に把握することが、反論の第一歩です。この段階で、感情的に相手を非難したり、焦って要求を飲んだりすることは絶対に避けてください。
ステップ2:減額を主張できる証拠を集める
交渉を有利に進めるためには、客観的な証拠が何よりも重要です。特に「意に沿わない関係だった」という主張は、デリケートな問題だけに、証拠の有無が結果を大きく左右します。
以下のようなものが証拠となり得ます。
- 相手からの執拗な誘いや、強要を示すメッセージ: LINE、メール、SNSのDMなど。
- 通話の録音: 相手が威圧的な言動をしている部分など。
- 第三者の証言: 職場の同僚など、相手のセクハラ行為を見聞きしていた人の証言。
- 専門機関への相談記録: 会社のコンプライアンス窓口や、公的な相談機関に相談していた場合の記録。
証拠は、感情的になって消去してしまわないよう、慎重に保全してください。スマートフォン上のやり取りは、スクリーンショットを撮っておくのが確実です。
ステップ3:弁護士に相談し、交渉を依頼する
減額事由があり、証拠も集められそうな場合でも、ご自身で相手方と直接交渉することはおすすめできません。
特に「意に沿わない関係だった」という主張は、相手から「合意の上だったはずだ」と強い反発を受けることが予想されます。当事者同士では、感情的な言い争いになり、話がこじれてしまうケースがほとんどです。
法律の専門家である弁護士が代理人として間に入ることで、以下のようなメリットがあります。
- 精神的負担の軽減: 相手方と直接顔を合わせたり、連絡を取ったりする必要がなくなります。
- 冷静かつ論理的な交渉: 法的な根拠に基づき、冷静に減額を主張できます。
- 適切な解決金の提示: 裁判になった場合の見通しを踏まえ、現実的な落としどころを探ることができます。
専門家に任せることで、あなたは平穏な日常を取り戻すことに集中できるのです。

不貞慰謝料の減額交渉でやってはいけない3つのこと
慰謝料を請求されて動揺している時ほど、誤った対応をしてしまいがちです。ここでは、あなたの立場を不利にしてしまう「やってはいけないNG行動」を3つご紹介します。
NG1:請求を無視・放置する
「怖いから」「どうせ払えないから」といって請求を無視し続けるのは、最も危険な対応です。相手方は、あなたが支払う意思がないと判断し、裁判(訴訟)を起こす可能性が高まります。
裁判所から訴状が届いても無視していると、相手の主張が全面的に認められた判決が出てしまい、預貯金や給与などを差し押さえられる「強制執行」という手続きに進むおそれがあります。事態を悪化させないためにも、請求には必ず何らかの対応をする必要があります。
NG2:焦って念書や合意書にサインする
「この場を早く収めたい」という一心で、相手が提示する念書や合意書に安易にサインをしてはいけません。一度書面に署名・押印してしまうと、その内容に法的な拘束力が生じ、後から「やっぱり減額してほしい」と主張することは極めて困難になります。
相手から何らかの書面へのサインを求められた場合は、「弁護士に相談してからでないとサインできません」と伝え、必ず専門家のチェックを受けてください。
NG3:感情的に相手を煽る・嘘をつく
請求に対して腹が立つ気持ちは理解できますが、感情的に相手を罵倒したり、事実を捻じ曲げて嘘の反論をしたりすることは、百害あって一利なしです。相手の感情を逆なでし、態度を硬化させてしまうだけで、交渉での解決が遠のいてしまいます。
また、もし裁判になった場合、嘘の主張は簡単に見破られ、裁判官からの心証を著しく悪くします。その結果、あなたにとって不利な判決が下されるリスクが高まります。交渉はあくまでも冷静に、誠実な態度で臨むことが大切です。
慰謝料減額は弁護士へ。福岡フォワード法律事務所が全力でサポート
不貞慰謝料を請求され、特にその背景に「意に沿わない関係」というデリケートな問題が隠されている場合、その精神的なご負担は計り知れません。一人で抱え込み、誰にも相談できずに苦しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
慰謝料の減額交渉は、法律の知識はもちろん、相手の心理を読み解き、有利な事実を的確に主張する高度な交渉術が求められます。ご自身で対応するには、あまりにも荷が重いと感じるのが当然です。そんな時こそ、私たち弁護士を頼ってください。
福岡フォワード法律事務所は、「弁護士はサービス業」という信念のもと、相談者様が話しやすい親しみやすい雰囲気作りを何よりも大切にしています。事務所名に込めた「フォワード(FW)」の想いの通り、あなたを守るため、そしてあなたが前へ進むために、私は法的に可能な範囲で最善の解決を目指し、的確に対応します。
高額な慰謝料請求に、言われるがまま応じる必要はありません。あなたのそのお悩み、まずは私に聞かせてください。夜間や土日のご相談も、事前のご予約により柔軟に対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの未来のために、私が最善の道を切り開きます。
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事務所名:福岡フォワード法律事務所
所属弁護士会:福岡県弁護士会
代表弁護士:秀﨑 康男(ひでさき やすお)
所在地:福岡県福岡市中央区赤坂1丁目5番22号 赤坂えがしらビル4階
