在宅事件の不起訴はいつわかる?処分通知と不起訴を目指す活動を解説

在宅事件の不起訴はいつわかる?処分決定の時期と通知の仕組み

逮捕されずに自宅で生活を続けながら警察や検察の捜査を受ける「在宅事件」では、取り調べが終わった後に何カ月も連絡が途絶えることが珍しくありません。「いつ起訴か不起訴かが決まるのだろう」「連絡がないということは、もう不起訴で終わったのだろうか」と、毎日落ち着かない気持ちで過ごされている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、在宅事件には法律上「いつまでに処分を決めなければならない」という一律の期限がありません。さらに、検察官が不起訴処分を決めたとしても、原則としてご本人へ自動的に通知される仕組みにはなっていないのです。つまり、ただ自宅で連絡を待っているだけでは、不起訴になった事実すら正確に把握できないおそれがあります。

ここでは、在宅事件の処分が決まる時期の目安や、送検後の処分の分かれ道、そして結果がどのように伝わるのかという基本の仕組みについて、福岡市で多くの刑事事件の弁護に携わってきた福岡フォワード法律事務所の代表弁護士秀﨑が丁寧に解説します。なお、逮捕されたケースも含めた刑事手続き全体の流れや弁護活動の基本については、刑事事件のページで体系的に解説しています。

在宅事件には一律の処分期限がなく数か月以上かかることもある

警察に逮捕・勾留される「身柄事件」の場合、被疑者の身体の自由を大きく奪うことになるため、刑事訴訟法によって厳格な時間制限が設けられています。逮捕から最大23日間という限られた期間内に、検察官は起訴するか、不起訴にするか(あるいは処分保留で釈放するか)を決断しなければなりません。

これに対し、身体拘束を伴わない在宅事件には、このような法定の処分期限が存在しません。捜査機関には犯罪捜査規範等に基づき迅速かつ適確に捜査を遂行することが求められますが、逮捕・勾留に伴う身柄拘束の期間制限(最大23日間)が適用されないため、いつまでに終局処分を下さなければならないという一律の期限は定められていないのです。法律上は、犯罪ごとに定められた「公訴時効(起訴できる期限)」が成立するまで、捜査を継続することが可能な仕組みとなっています。

実務上の目安としては、警察での取り調べが一通り終わってから検察庁へ書類が送られ(書類送検)、検察官が最終的な処分を下すまでに数カ月から半年程度かかるケースが多く見られます。共犯者がいる事件や、スマートフォンの解析・防犯カメラの精査といった客観的証拠の分析が必要な事件、あるいは否認事件などでは、1年近くの期間を要することも珍しくありません。在宅事件において警察や検察から連絡がこない理由と捜査期間の目安は事案の性質によって大きく異なるため、「取り調べから何日経ったから必ず結果がわかる」という明確な基準はないことを押さえておく必要があります。

送検後に検察官が判断する3つの終局処分と判明するタイミング

警察での捜査がまとまると、事件の記録や証拠物が検察庁へ引き継がれます。これを「送致(書類送検)」と呼びます。送検を受けた検察官は、記録を精査し、必要に応じて自らも取り調べを行ったうえで、最終的に以下の3つの「終局処分」のいずれかを決定します。どの処分になったかによって、ご本人が結果を知るタイミングと方法はまったく異なります。

終局処分の種類処分の内容と前科の有無本人に結果がわかるタイミング・方法
① 公判請求(正式起訴)公開の法廷で刑事裁判を開く手続き。有罪判決が確定すれば前科がつく。起訴後、裁判所から自宅へ「起訴状謄本」や「公判期日呼出状」が特別送達(郵便)で届いた時点。
② 略式起訴(略式手続)公開の裁判を開かず、書面審理のみで100万円以下の罰金または科料を科す手続き。有罪となるため前科がつく。検察官から事前に手続きへの同意確認・署名押印を求められ、後日、簡易裁判所から「略式命令謄本」が届いた時点。
③ 不起訴処分起訴を見送り、刑事手続きを終了させる処分。裁判にならないため前科はつかない。自動的な書面送達の仕組みはない。本人や弁護士から請求・照会をして初めて判明することが多い。
検察官が下す3つの終局処分と結果が判明するタイミング

このように、①公判請求や②略式起訴といった「起訴」に踏み切られた場合は、裁判所からの特別送達郵便や検察官からの事前確認があるため、ご本人にも確実に結果が伝わります。一方で、最も望ましい結果であるはずの③不起訴処分に限って、裁判所や検察庁から自動的に通知書が送られてくる仕組みになっていない点が、在宅事件の大きな特徴といえます。

在宅事件の書類送検後に検察官が判断する3つの終局処分(公判請求・略式起訴・不起訴)と結果が判明する仕組みの図解

不起訴は原則として通知されず呼び出しなしで決まる場合もある

検察官が不起訴処分(罪を犯したことは認められるものの情状を考慮して起訴を見送る「起訴猶予」、証拠が足りない「嫌疑不十分」、そもそも犯罪の嫌疑がない「嫌疑なし」など)を決めた場合、法律上、検察庁から被疑者へその結果を自動的に通知する義務はありません。実務上も、検察官や検察事務官がわざわざ電話をかけて「不起訴になりましたよ」と教えてくれるケースは少数派です。

さらに注意したいのが、検察官からの呼び出しが一度もないまま処分が決まるケースがあるという点です。通常、書類送検された後は警察や検察からの呼び出しを受け、検察庁に出向いて検察官の取り調べを受ける流れが一般的です。しかし、以下のような事情がある事案では、検察官による直接の取り調べ(呼び出し)が省略され、警察から送られた書類の審査だけで不起訴処分が下されることがあります。

  • 被害額が極めて小さく、事実関係も単純明白な軽微事案
  • 書類送検される前の段階で、弁護士を通じて被害者との示談が完全に成立し、宥恕(許し)を得ている事案
  • 警察の捜査記録を見るだけで、犯罪を立証する証拠が明らかに不足している(嫌疑不十分)と判断できる事案
  • 告訴がなければ起訴できない親告罪(器物損壊罪や名誉毀損罪など)において、すでに告訴が取り下げられている事案

このように、「検察からまだ一度も呼ばれていないし、連絡もない」という状況は、「まだ検察官が手をつけておらず処分が決まっていない状態」なのか、それとも「すでに呼び出しなしで不起訴処分が決まって事件が終了している状態」なのか、外からはまったく見分けがつかないのです。連絡がないことだけを根拠に「もう終わったはずだ」と自己判断するのは危険であり、逆にまだ処分前であるなら、検察官が犯罪の内容や証拠、情状などを踏まえて最終判断を下す前に、被害者との示談交渉や有利な情状資料の提出などを行える機会が残されているともいえます。

不起訴になったか確認する方法と不起訴処分告知書の請求条件

検察庁から連絡がない状態が続くと、「毎日ポストを覗くのが怖い」「職場の電話が鳴るたびにビクッとしてしまう」という精神的な負担が積み重なっていきます。ここでは、私が実際に扱っているご相談の傾向も踏まえながら、ある会社員の方のケースをご紹介します。

会社員のBさんは、知人との金銭トラブルに巻き込まれ、詐欺の疑いで警察署から複数回の事情聴取を受けました。逮捕はされず在宅事件として捜査が進み、最後の取り調べで警察官から「これから検察庁に事件を送ります」と告げられました。ところが、それから3カ月以上が過ぎても、検察庁からは電話一本、ハガキ一枚すら届きませんでした。

「このまま何も起きずに終わるのだろうか、それとも忘れた頃に突然起訴されるのだろうか……」。Bさんは先の見えない不安から仕事にも集中できなくなり、思い切って当事務所へ相談にいらっしゃいました。私がすぐに警察署へ連絡して送検状況を調べ、続けて検察庁に事件の処理状況を照会したところ、驚くべき事実が判明しました。事件はすでに検察庁へ送致されていたものの、まだ検察官による最終処分が決まっておらず、判断が保留されたままになっていたのです。

まだ処分が決まっていないと分かれば、こちらから動くことができます。私はBさんから当時の詳細な経緯を改めて聞き取り、捜査上の問題点やBさんに有利な客観的事情を整理した「弁護人意見書」を作成して、担当検察官へ速やかに提出しました。その意見書を踏まえて検察官が最終判断を行った結果、Bさんは無事に不起訴処分となり、不起訴処分告知書によって事件の終了を明確に確認することができました。

在宅事件のご相談では、Bさんのように「何か月も連絡がないのですが、もう終わったのでしょうか」というご質問を本当によくいただきます。私が特にお伝えしたいのは、連絡がない状況をそのまま放置せず、現在どの段階にあるのかを正確に確かめることの大切さです。ここでは、ご自身の事件の進捗や不起訴の結果を確認する具体的な方法と、書面で証明を得るための条件を詳しく解説します。

警察・検察への進捗確認と刑事訴訟法259条に基づく告知請求

現在、自分の事件がどこにあり、どのような状態なのかを知るためには、捜査の段階に応じた窓口へ確認を行う必要があります。

まず、警察での取り調べが終わった後は、その警察署の担当部署(刑事課など)に連絡し、「事件がすでに検察庁へ送致(書類送検)されたかどうか」を確認します。もしまだ警察署内に記録があるなら、処分が決まる段階には至っていません。すでに送検されている場合は、「いつの日付で、どこの検察庁に送致されたか」を把握したうえで、今度は送致先の検察庁(事件課や担当検察官室)へ連絡し、現在の処分状況を照会する流れとなります。

そして、検察官が不起訴処分を下した後に、その結果を公式な書面として確認できる制度が「不起訴処分告知書」の交付請求です。先ほど「不起訴は自動通知されない」と説明しましたが、被疑者側から「結果を教えてください」と求めた場合にまで検察官が沈黙してよいわけではありません。刑事訴訟法259条には、次のように明確なルールが定められています。

検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。

この規定に基づき、被疑者本人(または弁護人)が検察官に対して告知を請求すれば、検察庁から「不起訴処分告知書」という公文書を交付してもらうことができます。なお、犯罪被害者に対して検察庁が処分結果を知らせる「被害者等通知制度」とは根拠も目的もまったく別の制度ですので、被疑者側が結果を知るためには、自ら請求の手続きをとることが不可欠です。

条文の正確な規定内容については、e-Gov法令検索の刑事訴訟法(第二百五十九条)もあわせてご参照ください。

不起訴処分告知書を請求できる条件・手順と記載内容の注意点

不起訴処分告知書を取得するためには、実務上のいくつかの条件と手順を踏む必要があります。誰でも・いつでもすぐに発行してもらえるわけではないため、以下のポイントを事前に確認しておきましょう。

項目具体的な内容・条件
請求できる時期事件が検察庁へ送致され、かつ検察官が不起訴処分を決定した後。(※送検前や処分未決の段階では発行されませんが、取り調べ時などに「もし不起訴になったら告知書が欲しい」とあらかじめ請求の意思を伝えておくことは可能です)
請求できる人被疑者本人、または選任された弁護人(弁護士)。ご家族や勤務先の上司などが本人に代わって直接請求することは原則としてできません。
請求先と方法事件を担当した検察庁の担当検察官(または事件課等の窓口)。直接窓口へ出向くか、郵送で交付申請書を提出して請求します。
必要なもの不起訴処分告知請求書、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等の写し)、印鑑、郵送で受け取る場合は返信用封筒(切手貼付)など。(※検察庁により細部が異なる場合があります)
交付費用手数料は無料です(郵送請求時の切手代等の実費のみ自己負担)。
不起訴処分告知書の請求条件と手続きの要点

ここで一つ、実務上の重要な注意点があります。交付される不起訴処分告知書には、被疑者の氏名、罪名、そして「上記被疑事件につき、年月日公訴を提起しない処分(不起訴)にしましたので告知します」という事実が記載され、検察官の記名押印がなされます。しかし、「起訴猶予」「嫌疑不十分」「嫌疑なし」といった具体的な不起訴の理由(裁定主文)までは、原則として記載されません。

「そもそも犯罪の嫌疑がない『嫌疑なし』なのか、犯罪を認定する証拠が十分でない『嫌疑不十分』なのか、あるいは『起訴猶予』なのか、具体的な不起訴の理由を書面で確認したい」と思われるかもしれませんが、刑事訴訟法259条が求めているのはあくまで「公訴を提起しない処分をした旨」の告知にとどまります。そのため、検察庁の運用上、具体的な処分理由は記載されず、不起訴処分告知書そのものが「無実であること」を直接証明する書類となるわけではありません。それでも、「検察官が審査した結果、刑事裁判にはかけない(前科はつかない)と公式に決定した」という事実を証明する客観的な公文書としての価値は非常に高く、万が一事件が勤務先に知られてしまった場合の報告資料や、ご自身の心の区切りとして大変役立ちます。

本人による問い合わせの難しさと弁護士を通じて確認するメリット

制度上は、被疑者ご本人が警察署や検察庁に直接電話をかけて進捗を尋ねたり、不起訴処分告知書を請求したりすることも可能です。しかし、実際に一般の方がご自身で問い合わせようとすると、思わぬ壁にぶつかることが少なくありません。

たとえば、警察署に電話をしても「捜査上の秘密に関わるので答えられない」「送検したかどうかはお伝えできない」と冷たくあしらわれてしまうことがあります。また、検察庁に電話をかけても、電話口だけでは本人確認が難しいため個人情報保護を理由に回答を断られたり、「送致日や事件番号、担当検察官の名前が分からないとお調べできません」と言われて確認が行き詰まったりするケースが頻発します。さらに、もしまだ処分が決まっていない段階で本人が何度も電話をかけると、担当官にマイナスの心証を与えかねないという心配も生じます。

この点、弁護士に依頼して照会を行えば、こうした実務上のハードルをスムーズに乗り越えることができます。なお、在宅事件で起訴される前の段階では国が費用を負担する「国選弁護人」はつかないため、ご自身で依頼する「私選弁護人」を選任する形となります。弁護士が弁護人選任届を提出して正式な立場で連絡を入れれば、警察は送致日や送致番号を教えてくれますし、検察庁も担当検察官の配属状況や「すでに処分済みか、まだ審査中か」といったステータスを回答してくれます。

もっとも、弁護士が問い合わせたからといって、検察官が「何月何日に処分を下します」と未来の確定時期まで約束してくれるわけではありませんし、問い合わせただけで処分が自動的に早まるとも限りません。しかし、先ほどのBさんの事例のように、「まだ処分が決まっていない」という事実を正確に把握できれば、検察官が最終処分を下す前に、不起訴を求める意見書や有利な証拠を速やかに提出できるという大きなメリットがあるのです。

在宅事件の進捗確認や不起訴処分告知書の請求について弁護士に相談し安心する男性のイメージイラスト

在宅事件で処分が決まる前に不起訴を目指して行うべき活動と提出資料

在宅事件で「いつ不起訴かわかるのだろう」と調べている方にとって、本当に大切なのは「結果がわかる時期を予測すること」ではなく、「検察官が最終処分を下す前に、不起訴を目指して具体的な行動を起こすこと」です。法律上は起訴後に検察官が公訴を取り消す制度(刑事訴訟法257条)も存在しますが、一度検察官が公判請求や略式起訴の決定を下した後に、示談成立などを理由として起訴が取り消されるケースは実務上極めて限られています。起訴された後は、公判で無罪を争う活動や、示談・被害弁償を進めて量刑の軽減(執行猶予など)を目指す対応へと段階が変わります。わが国の刑事裁判では起訴された場合の有罪率が99.9%近くにのぼるため、裁判にならず前科がつかない「不起訴処分」を目指すうえでは、起訴される前の段階での活動が極めて重要になるのです。

ここで、処分が決まる前の期間を有効に使って不起訴を獲得した、もう一つの事例をご紹介します。

会社員のAさんは、飲食店での口論から相手に暴行を加えてしまい、警察から事情聴取を受けました。逮捕はされず在宅事件となりましたが、取り調べから数週間が経っても検察庁から何の連絡もありませんでした。Aさんは「もし略式起訴で罰金刑にでもなれば前科がつき、会社に知られて懲戒処分や解雇になるのではないか」と強い危機感を募らせ、当事務所へご相談に来られました。

ご依頼を受けた私は、検察官からの呼び出しを待つことなく、直ちに被害者の方との示談交渉を開始しました。最初は被害者の方の怒りも強かったものの、Aさんの真摯な謝罪の気持ちを伝え、治療費や慰謝料などの賠償条件を丁寧に協議した結果、無事に示談が成立しました。しかも、単に金銭を支払うだけでなく、示談書の中に「Aさんを許し、刑事処罰を望まない」という宥恕(ゆうじょ)の意思表示を明確に盛り込むことができました。

私はすぐに、締結した示談書や示談金の支払証明書を添付した「弁護人意見書」を作成し、検察官へ提出して不起訴処分とするよう強く求めました。その結果、Aさんは検察庁から不起訴処分の告知を受け、罰金刑すら科されることなく、平穏な会社員生活を守り抜くことができました。

私が在宅事件のご相談を受ける際に常に意識しているのは、「検察官から呼び出しが来てから動くのではなく、連絡がない今のうちにできる手をすべて打つ」という姿勢です。検察官が起訴・不起訴(起訴猶予)を判断するにあたっては、刑事訴訟法248条や検察庁の内部基準(事件事務規程)に基づき、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」が総合的に審査されます。この審査で検察官の心を動かすために、処分前に準備・提出すべき具体的な活動と資料を詳しく見ていきましょう。

被害者との示談交渉と宥恕条項・被害弁償に関する資料

暴行・傷害、窃盗、不同意わいせつ等の性犯罪、器物損壊、詐欺など、特定の被害者が存在する事件において、検察官が処分を決めるうえで最も重く見る要素が「被害の回復がなされているか」そして「被害者の処罰感情(処罰を求める気持ち)がどうなっているか」の2点です。

これらを一挙に解決し、不起訴(起訴猶予)の可能性を飛躍的に高める活動が、被害者との示談交渉です。ただし、ただお金を渡して領収書をもらうだけでは刑事事件の示談としては不十分です。不起訴を目指すうえでは、以下の要素を満たした「示談書」を作成し、検察官へ提出することが極めて重要になります。

  • 宥恕(ゆうじょ)条項の明記:被害者が加害者の謝罪を受け入れ、「今回の件については加害者を許し、刑事処罰を一切望みません(寛大な処分を求めます)」という意思を示した条項です。この一文があるかないかで、検察官の評価は大きく変わります。
  • 被害届・刑事告訴の取下げ条項:すでに提出されている被害届や刑事告訴を取り下げる旨の合意、および関連する「告訴取消書」や「被害届取下書」の作成です。
  • 清算条項と支払証明資料:合意した示談金(治療費・慰謝料・被害弁償金など)を確実に支払ったことを示す銀行の振込明細書や領収書の写しを、示談書とセットで検察官へ提出します。

もっとも、被疑者ご本人が被害者の連絡先を警察に尋ねても、二次被害や証拠隠滅を防ぐため絶対に教えてもらえません。弁護士が介入することで初めて、「弁護士限り(本人に連絡先を知らせない条件)」で検察官や警察官から被害者の連絡先を開示してもらえる可能性が生まれます。

また、事案によっては被害者の処罰感情がどうしても強く、宥恕条項付きの示談に応じてもらえないケースもあります。しかし、そこで諦めてはいけません。示談書の取り交わしに至らなくても、実損額(盗んだ品物の代金や壊した物の修理代など)を支払う「被害弁償」だけでも受け取ってもらうこと、あるいは贖罪寄付(公的な支援団体への寄付)を行うこと、そして「弁護士を通じて何度も誠実に謝罪と賠償を申し入れた」という交渉経過の報告書を証拠化して検察官に提出することが、次善の策として非常に大きな意味を持ちます。

再発防止策の具体化と勤務先・家族の監督環境を示す情状資料

示談の有無と並んで、検察官が「今回はあえて起訴を見送っても大丈夫か(起訴猶予にできるか)」を判断する際に重視するのが、「二度と同じ過ちを繰り返さないという再犯可能性の低さ」です。取り調べの席で口頭で「深く反省しています、もうやりません」と述べるだけでは、検察官を納得させるには力不足といえます。反省の気持ちや生活環境の改善を、「目に見える客観的な資料(情状資料)」の形にして提出することが不可欠です。

資料のカテゴリー具体的な提出資料の例検察官に対してアピールするポイント
① 再発防止に関する資料・専門クリニック(依存症外来等)の通院記録、診断書・カウンセリングの受講証明書・生活環境改善の記録(禁酒日記、スマートフォン等の処分証明、転居記録など)・本人が自筆で作成した反省文・謝罪文犯行の原因(アルコール問題、クレプトマニア[窃盗症]、性的依存、ストレス等)を客観的に見つめ直し、精神論ではなく具体的な行動として再犯防止に取り組んでいる事実を示す。
② 家族の監督環境に関する資料・同居家族(配偶者・両親など)が作成した「身元引受書」「監督誓約書」・家族構成や生活状況を示す資料一人で孤立しているのではなく、身近な家族が事件の重大性を認識し、日常生活を厳しく監督・サポートできる更生環境が整っていることを示す。
③ 勤務先・社会的影響に関する資料・雇用契約書、在職証明書、給与明細・会社の就業規則(懲戒解雇事由の記載部分)・資格証の写し(国家資格等を有する場合)真面目に働いて社会に貢献している事実を示すとともに、もし起訴(罰金刑含む)されて前科がつけば、就業規則や資格制限により失職し、家族も含めて過度な社会的制裁を受ける事情を疎明する。
処分前に準備・提出を検討すべき主な情状資料

たとえば、万引きを繰り返してしまうケースや盗撮などの事案では、ご本人の意思の力だけで再犯を防ぐのは困難と見なされがちです。そこで、早い段階から専門の医療機関やカウンセリングに通い始め、その通院記録や医師の所見を資料として提出することで、犯行の原因への対処や治療の継続状況など、再発防止に向けた具体的な取り組みを客観的に示すことができます。

弁護人意見書の役割と検察官へ提出すべき適切なタイミング

ここまでご紹介した示談書、被害弁償の記録、再発防止の通院資料、そして家族の身元引受書などを、ただバラバラと検察庁の窓口に出すだけでは十分な効果は発揮されません。収集した数々の有利な証拠を法的な観点から体系的に整理し、「なぜ本件では公判請求や略式罰金ではなく、不起訴処分(起訴猶予)を選択すべきなのか」という論理を組み立てて検察官を説得する文書が「弁護人意見書」です。

検察官は日々膨大な数の在宅事件の記録を抱えており、一つひとつの事件に割ける時間は限られています。だからこそ、弁護士が検察官の判断基準(犯情の軽微性、被害回復の完了、再犯防止体制の確立、起訴による不利益の大きさなど)に沿って証拠を引用しながら論理的な意見書を提出することで、検察官が「不起訴」という決断を下しやすくなるのです。

また、もしご本人が「自分はやっていない(無実である)」「故意ではなかった」と主張している否認事件や、警察の見立てに無理がある事案(先ほどのBさんの事例のようなケース)では、意見書の役割はさらに重要になります。防犯カメラや契約書などの客観的証拠の矛盾点を突き、犯罪の構成要件を満たしていないことや証拠価値の低さを法的に論証して、「嫌疑不十分」または「嫌疑なし」による不起訴を強く求めていきます。

そして、この弁護人意見書を提出するうえで最も注意しなければならないのが「タイミング」です。冒頭でお伝えしたとおり、在宅事件には処分期限がない反面、検察官の審査が終わり次第、いつ終局処分が下されてもおかしくないリスクがあります。「示談がまとまったから来週意見書を出そう」と思っていた矢先に、検察官が略式起訴などの処分を下してしまえば、不起訴処分を目指す段階としての対応はできなくなってしまいます。

そのため実務では、事件が送検された直後(または担当検察官が決まった直後)の段階で、まず弁護士から担当検察官へ連絡を入れ、「現在、被害者の方と示談交渉を進めており、情状資料も準備中です。来月〇日頃までに弁護人意見書を提出しますので、それまで終局処分を待ってください」と処分の留保(ストップ)を申し入れることが極めて重要になります。もちろん、最終的な処分時期の決定権は検察官にあるため、留保の申し入れに必ず応じてもらえるとは限りませんが、交渉の進捗や意見書の提出予定を伝えて検察官と調整を図りながら、早期提出に向けて迅速に動くことが在宅事件の弁護における大きなポイントといえます。

在宅事件の処分決定前に行うべき示談交渉・情状資料の準備と弁護人意見書提出の流れを示す図解

不起訴処分になった後の前科・前歴の扱いと社会生活への影響

ここまで不起訴の確認方法や処分前の活動について解説してきましたが、そもそもなぜこれほどまでに「不起訴処分」を重視する必要があるのでしょうか。それは、不起訴処分で終わるか、それとも起訴(略式起訴を含む)されて有罪判決が確定するかによって、前科の有無や、刑の種類・各資格法・勤務先の就業規則に基づく今後のキャリアへの影響が大きく異なってくるからです。

最後に、不起訴処分が確定した後の「前科」と「前歴」の正しい意味と、今後の社会生活への影響について整理しておきましょう。

不起訴になれば前科はつかないが捜査対象となった前歴は残る

まず最も重要な事実として、不起訴処分になれば「前科」は一切つきません。

法律上の「前科」とは、刑事裁判(通常の公判または略式手続)にかけられ、有罪判決(死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料、執行猶予付き判決を含む)が確定した履歴のことを指します。在宅事件でよくある誤解として、「裁判所に行かずに罰金を払うだけ(略式罰金)なら前科にはならないだろう」と思われている方がいますが、これは大きな間違いです。略式手続による罰金刑の確定も有罪判決と同様に前科となり、その履歴は検察庁の記録として管理されるほか、刑法34条の2により刑の言渡しの効力が消滅するまでの一定期間(罰金刑の場合は刑の執行を終わり、または執行の免除を得た日から5年間など)、本籍地の市区町村の犯罪人名簿にも記載されます。

もし前科がついてしまった場合、一定の国家資格や職業(医師、看護師、教員、保育士、警備員、公務員など)において欠格事由に該当し、資格を失ったり就職が制限されたりする法的な不利益が生じるおそれがあります。また、会社の就業規則で「刑事罰を受けたとき」が懲戒解雇事由として定められている場合、罰金刑であっても解雇のリスクに直面します。これに対し、不起訴処分であれば当該事件について刑事罰を受けたことにならないため、有罪判決の確定を要件とする法律上の欠格事由には該当しません(※もっとも、行為そのものを理由とする行政上の処分や職場の懲戒処分、民事上の損害賠償責任などは刑事処分とは別に判断される点には留意が必要です)。

一方で、不起訴になったとしても、警察や検察の捜査対象として立件されたという記録である「前歴」は、警察や検察庁の内部データベースに残ります。「前歴が残ったら、やはり就職や生活に響くのではないか」と不安に思われるかもしれませんが、前歴と前科には決定的な違いがあります。

比較項目不起訴処分になった場合(前歴のみ)略式起訴で罰金刑等になった場合(前科あり)
刑事罰の有無刑事罰は一切科されない(無罪放免と同じく刑罰なし)。有罪判決が確定し、罰金等の刑罰が科される。
記録の管理先警察・検察の内部記録(前歴)として管理される。一般には公開されず、被害者参加制度等に基づく法定の記録閲覧などの例外を除き、勤務先や家族の通常の照会に開示されることはない。警察・検察の記録に加え、本籍地の市区町村の「犯罪人名簿」に一定期間登録される。
資格・職業の制限有罪確定を要件とする法律上の欠格事由には該当しない。(※行為自体を理由とする行政処分や懲戒等は別途判断される)刑の種類や資格法により、欠格事由に該当して資格停止・喪失となる場合がある。
履歴書の賞罰欄記載する義務はない。「賞罰なし」と書いても経歴詐称にならない。賞罰欄がある履歴書では原則として記載義務があり、隠すと経歴詐称を問われるリスクがある。
海外渡航への影響原則として影響なし(※米国ビザ申請等で逮捕歴自体を問われる特殊な例外を除く)。渡航先の国によってはビザ取得が厳しくなる場合がある。
不起訴処分(前歴のみ)と略式罰金等(前科あり)の比較

このように、前歴の情報は一般には非公開であり、現在の勤務先や転職先、家族が通常の採用照会などで警察や検察に問い合わせても回答されることはありません。就職や転職の際に提出する履歴書の「賞罰欄」に書く必要もありませんから、不起訴処分となることで、有罪確定(前科)に伴う法律上の資格制限などを避けることができます。

処分結果の連絡を待つだけでなく早期に弁護士へ相談すべき理由

在宅事件において、「いつ不起訴かどうかわかるのだろう」「検察から連絡が来なくて怖い」と一人で悩み続けている状態では、すでに処分が終わっているのか、それともまだ審査中なのかを判断することはできません。だからこそ、まずは現在の処分状況を正確に確認し、まだ検察官の最終処分が下されていないのであれば、示談交渉や提出資料の準備といった不起訴を目指すための弁護活動を速やかに検討することが重要です。

特に、現在以下のような状況に当てはまる方は、検察庁からの通知や呼び出しをただ待つのではなく、一刻も早く弁護士へ相談されることを強くおすすめします。

  • 警察での取り調べが終わってから数週間〜数カ月が経過しているが、事件が今どこにあるのか(送検されたのか、処分済みか)分からず不安を抱えている方
  • 被害者がいる事件にもかかわらず、連絡先が分からないために謝罪や示談交渉にまったく着手できていない方
  • 自分はやっていない(または警察の筋書きに誤りがある)のに、このまま書類だけで一方的に起訴されてしまうのではないかと懸念している方
  • 勤務先や家族への影響を最小限に食い止め、前科がつかない不起訴処分を目指し、その証明として「不起訴処分告知書」を取得したい方

当事務所(福岡フォワード法律事務所)では、ただ受け身で処分結果を待つのではなく、早期に捜査機関への状況確認を行い、終局処分が下される前に被害者との示談交渉や有利な情状資料・意見書の提出を積極的に進める対応を重視しています。

在宅事件の弁護においては、検察官が処分を決定する前の時間をどう活用するかが重要であり、受け身の姿勢で連絡を待つだけでは十分な対策をとれないおそれがあります。私自身、これまで約5,000件以上のご相談に向き合う中で、連絡がない期間に迅速に検察庁へ照会をかけ、粘り強く被害者の方と示談交渉を行い、法的な観点と情状面を整理した意見書を提出する活動に注力してまいりました。「弁護士は敷居が高い」と感じられるかもしれませんが、当事務所ではどのようなお悩みにも親身に耳を傾け、スピード感をもって対応することをお約束いたします。

検察官が起訴の決定を下してしまうと、不起訴処分を目指す段階から、刑事裁判等への対応へと状況が大きく変わってしまいます。毎日ポストや電話を気にする不安な日々から一歩を踏み出すために、まずは一度現在の状況を私たちにお聞かせください。

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