在宅事件で警察・検察から連絡がこないのはなぜ?捜査期間と確認方法

在宅事件で警察や検察から連絡がこない4つの理由

警察署で事情聴取を受けたあと、「また必要があれば連絡します」と言われて帰宅を許されたものの、そこから数週間、あるいは数カ月が過ぎても警察や検察から一切連絡がこない。このような状況に置かれると、「もう事件は終わったのだろうか」「それとも、ある日突然逮捕されたり裁判になったりするのだろうか」と、毎日気が気ではないはずです。

最初にお伝えしておきたい重要な結論があります。それは、「長期間連絡がこない=事件が終了した(許された)とは限らない」ということです。

身体を拘束されずに自宅で生活を続けながら捜査を受ける事件を「在宅事件」と呼びます。この在宅事件では、数カ月以上にわたって捜査機関からの連絡が途絶えるケースが日常茶飯事です。この記事では、なぜこれほどまでに連絡がこないのか、その背景には法律上の仕組みや捜査機関の内部事情、そして事件終了時の通知ルールなどについて、福岡市で多くの刑事事件の弁護に携わってきた福岡フォワード法律事務所の代表弁護士秀﨑が丁寧に解説します。

なお、在宅事件を含めた刑事手続き全体の流れや弁護活動の基本については、刑事事件のページで体系的に解説していますので、あわせて参考にしてください。

身柄事件のような厳格な期間制限がないため

在宅事件で連絡がこない最大の理由は、法律によって定められた「身体拘束に伴う短期の期間制限(タイムリミット)」が存在しない点にあります。

警察に逮捕され、警察署の留置場などに身体を拘束される事件を「身柄事件」といいます。身柄事件では、被疑者の人権を守るために、刑事訴訟法で身体拘束の期間について極めて厳格な時間制限が設けられています。具体的には、警察は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄と書類を検察庁へ送らなければならず、検察官はそこから24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)に裁判官へ勾留(こうりゅう:引き続き身体を拘束すること)を請求するか、釈放するかを決めなければなりません。さらに、勾留が認められた場合でも、原則10日間(延長を含めて最大20日間)のうちに、検察官は被疑者を起訴しないのであれば釈放しなければならないと定められています。そのため、勾留期間内に最終処分が決まらない場合は「処分保留」として釈放したうえで在宅捜査へ切り替えることになり、身柄拘束を続けながら捜査を行える期間は逮捕から最大でも23日間に限られているのです。

これに対して、在宅事件にはこのような「48時間」「最大23日間」といった一律の短期の期間制限がありません。刑事訴訟法や犯罪捜査規範では迅速な捜査や送致が求められているものの、身柄事件のような日数単位の法定上限がないため、事案の性質や証拠収集の状況によっては、公訴時効(起訴できなくなる期限)の範囲内で数カ月から1年以上にわたって捜査が続くケースも珍しくありません。

警察官や検察官は、常に複数の事件を同時に抱えています。手元に「厳格な身体拘束の期限が迫っている身柄事件」や「社会的な関心が高い重大事件」があれば、当然そちらの捜査に人員と時間を最優先で割くことになります。結果として、身体拘束の期限がない在宅事件の捜査や書類処理はどうしても後回しになり、被疑者への連絡が数カ月単位で途絶えてしまうのです。

身柄事件(最大23日間の身体拘束の期間制限あり)と在宅事件(短期の期間制限なし)の違いを比較した図解

警察が裏付け捜査や追加聴取を進めているため

あなた自身の初回の事情聴取が終わったからといって、警察の捜査がすべて完了したわけではありません。刑事事件では、被疑者本人の言い分(供述)だけでなく、それを客観的に証明するための「裏付け捜査」が不可欠だからです。

あなたが自宅に帰されたあとも、警察は水面下で以下のような捜査を進めているケースが多く見られます。

  • 被害者や目撃者、店舗関係者などに対する事情聴取
  • 現場周辺や店舗内の防犯カメラ映像の収集・精査
  • 任意提出を受けたスマートフォンやパソコンのデジタルフォレンジック解析(削除データの復元や通信履歴の調査)
  • 被害品や凶器などの鑑定、医療機関への診断書の照会

特に近年は、スマートフォン内のデータ解析や防犯カメラのリレー捜査などに専門部署の順番待ちが生じやすく、解析結果が出るまでに数カ月を要することも珍しくありません。また、被害者との日程調整が難航して聴取が遅れているケースもあります。

さらに、これらの裏付け捜査が一通り終わると、警察官は事件を検察庁へ引き継ぐ(書類送検する)ために、膨大な捜査書類を作成しなければなりません。捜査報告書や実況見分調書などをミスなくまとめ上げる作業にも相応の時間がかかるため、その間は被疑者に対して連絡をする必要がなく、結果として「放置されている」ように感じられる期間が続くことになります。

書類送検後に検察官が順番に記録を精査しているため

警察から「そろそろ検察庁に書類を送りますね」と告げられたあと、再び数カ月間も音沙汰がなくなることもよくあります。警察から検察庁へ事件の記録一式が引き継がれる手続きを「書類送検(正式には書類送致)」と呼びますが、書類が送られた当日に検察官から電話がかかってくることはまずありません。

身柄事件であれば、警察から送致されたその日のうちに検察官が被疑者と面会し、取り調べを行います。しかし在宅事件では、警察から送られてきた段ボール箱何箱分もの捜査記録が、担当検察官の執務室に順番に積み上がっていくのが実情です。

担当検察官は、日々発生する身柄事件の対応や、すでに起訴した事件の公判(裁判)対応に追われながら、合間を縫って在宅事件の記録を一つずつ読み込んでいきます。記録を精査した結果、「証拠が足りないから、もう一度この点について裏付けを取ってほしい」と警察に補充捜査を指示することもあります。そうなれば、再び警察の調査期間が発生します。

このように、検察官が記録を読み込み、補充捜査を経て、「被疑者を検察庁に呼び出して直接話を聞くべきか、それとも書面だけで処分を決めるか」を判断するまでに、書類送検からさらに1カ月〜数カ月程度の空白期間が生じるのが一般的なのです。

微罪処分や不起訴で事件が終了しているため

ここまで「捜査が続いている理由」をお話ししてきましたが、中には「連絡がこないまま、実はすでに事件が終了している」というケースも存在します。具体的には、以下の2つのパターンのいずれかで終結している場合です。

1つ目は、警察段階での「微罪処分(びざいしょぶん)」です。刑事訴訟法第246条ただし書に基づき、被害額が極めて少額な万引き(窃盗)や、怪我のない軽微な暴行事件などで、初犯であり、被害弁償が済んでいて反省も深いといった一定の条件を満たす場合、警察は検察庁へ書類送検をせず、警察限りの厳重注意などで事件を終了させることができます。微罪処分となった場合、あとから警察が「微罪処分で終わりましたよ」とわざわざ連絡をくれることは基本的にありません。

2つ目は、書類送検されたあとに検察官が「不起訴処分」としたケースです。在宅事件では、検察官が警察から送られた書類だけで「今回は起訴しない(不起訴)」と判断した場合、被疑者を一度も検察庁へ呼び出さないまま処分を決定することがあります。そして刑事訴訟法第259条の規定により、検察官は被疑者側から求め(請求)がない限り、不起訴になった事実を自発的に通知する義務を負っていません。

ただし、ここで最も注意していただきたいのは、「数カ月連絡がないから、きっと微罪処分か不起訴で終わったのだろう」と自己判断で思い込んでしまうリスクです。実際には捜査が長引いているだけなのに「終わった」と誤解し、後述するような不適切な行動をとったり、ある日突然届いた検察庁からの呼出状や裁判所からの起訴状にパニックになったりする方が後を絶ちません。

微罪処分や不起訴処分の告知に関する条文の詳細は、e-Gov法令検索の刑事訴訟法の条文データからもご確認いただけます。

事情聴取から処分決定までの流れと捜査期間の目安

警察で事情聴取を受けたあと、自分の事件が今どの段階にあり、最終的に処分が決まるまであとどのくらい待てばよいのか、全体像が見えないことが不安を増幅させます。

在宅事件の捜査期間は事案の複雑さや警察・検察の混雑状況によって大きく変動しますが、全体の目安としては「早くても2〜3カ月、長ければ半年〜1年以上」かかることも決して珍しくありません。ここでは、事情聴取後から最終的な処分決定に至るまでの時系列の流れと、各フェーズにおける期間の目安を具体的に整理します。

在宅事件の事情聴取から書類送検、検察庁の呼び出し、最終処分決定までの流れと期間目安のフロー図

警察の追加捜査から書類送検まで:1〜3カ月程度

初回の事情聴取を終えて帰宅したあと、警察が事件を検察庁へ送る「書類送検」までにかかる期間は、おおむね1〜3カ月程度が目安となります。

この期間中、警察から1度も連絡がないまま書類送検されることもありますが、必要に応じて追加の呼び出しを受けるケースも少なくありません。たとえば、犯行現場に立ち会って当時の状況を再現する「実況見分(じっきょうけんぶん)」や、裏付け捜査で新たに判明した事実についての2回目・3回目の事情聴取(供述調書の作成)、あるいは被疑者としての写真撮影や指紋・DNA型資料の採取などのために警察署へ出頭を求められることがあります。

被疑者が事実を素直に認めている単純な自白事件であれば、聴取回数は全体で1〜3回前後、期間にして1〜2カ月ほどで書類送検に至るケースが多く見られます。一方で、以下のような事情がある事件では、警察段階の捜査だけで半年から1年以上を要することも珍しくありません。

  • 否認事件:被疑者が容疑を否認している、または一部の事実関係について被害者と食い違いがある場合、警察は慎重に客観的証拠を集めるため捜査が長期化します。
  • 共犯事件:複数人が関与する事件では、共犯者全員の聴取や裏付けを取り終えるまで送検を待つ傾向があります。
  • デジタル証拠や余罪がある事件:スマートフォン等の解析結果待ちや、他にも複数の犯行(余罪)が疑われている場合は、すべての調査がまとまるまで数カ月〜1年単位の時間がかかります。

書類送検から検察庁の呼び出しまで:1〜数カ月程度

警察の捜査が一通り終わり、事件記録が検察庁へ書類送検されると、事件の主導権は警察から検察官へと移ります。書類送検されてから検察庁より被疑者へ呼び出しの連絡が来るまでの期間は、1カ月〜数カ月程度(長い場合は半年以上)が一般的です。

検察庁からの連絡方法は、担当の検察事務官から被疑者の携帯電話へ直接電話がかかってくるケースと、自宅へ「呼出状」という書面が郵送されてくるケースの2通りがあります。電話や書面で指定された日時に検察庁へ出向き、検察官による取り調べを受けることになります。もし今後、検察庁や警察署から突然の出頭要請があった場合の具体的な心構えや対応手順については、警察や検察からの呼び出しへの対応を事前に把握しておくと落ち着いて行動できます。

在宅事件における検察官の取り調べは、すでに警察が作成した調書や証拠をベースに行われるため、自白事件であれば1回(1〜2時間程度)で終わることがほとんどです。ただし、容疑を否認している場合や、犯行の動機・経緯について検察官がさらに詳しく確認する必要があると判断した場合には、2回以上にわたって呼び出しを受けることもあります。

検察官による最終処分(不起訴・略式起訴・公判請求)の決定

検察官による取り調べが終わると(あるいは呼び出しがないまま)、その後数週間〜1カ月程度のうちに、検察官は以下の3つのうちいずれかの「最終処分」を決定します。

処分の種類手続きの内容刑罰・前科の有無本人への通知方法
不起訴処分刑事裁判を行わず、事件をそのまま終了させる処分(起訴猶予・嫌疑不十分など)。刑罰なし。前科はつかない。原則として通知されない(自ら請求すれば告知書が交付される)。
略式起訴(略式手続)公開の裁判を開かず、書面審理のみで100万円以下の罰金または科料を科す簡易な裁判手続き。罰金または科料。前科がつく。裁判所から自宅へ「略式命令書」が特別送達で郵送される。
公判請求(在宅起訴)公開の法廷で正式な刑事裁判を開く手続き。自宅から裁判所へ出廷する。有罪となれば拘禁刑(旧懲役・禁錮)や罰金など。前科がつく。裁判所から自宅へ「起訴状」や召喚状が特別送達で郵送される。
検察官が下す3つの最終処分の比較

ここで特に注意していただきたいのが、2つ目の「略式起訴(りゃくしききそ)」です。略式起訴は、検察庁での取り調べの際などに、検察官から「今回は公開の裁判ではなく、罰金で終わらせる略式手続にしようと思います。異議がなければこの書類(略式請書)にサインしてください」と打診されるのが通例です。

「裁判にならず、お金を払えば終わるならよかった」と安易にサインしてしまう方が多いのですが、略式起訴による罰金刑は、交通反則金(青切符)などとは全く異なる歴とした「刑事罰」であり、確定すれば前科がつきます。一定の国家資格の制限や就職・転職への影響など、前科がつくことによるデメリットは決して小さくありません。前科を回避して「不起訴処分」を得るためには、検察官が最終処分を決定する前の段階(できれば検察庁から呼び出しを受けて略式手続を打診される前のできるだけ早い時期)に、被害者との示談交渉や意見書の提出といった弁護活動を進めておくことが重要です。

なお、略式起訴や公判請求(起訴)をされた場合は、検察官の処分決定から数週間〜1カ月ほど経った頃に、裁判所から自宅宛てに「特別送達」という特殊な郵便で略式命令書や起訴状が届きます。これによって、自分が起訴された事実を知ることになります。

警察・検察に現在の進捗状況を確認する方法と限界

「待っているだけでは不安で仕方がない」「今、自分の事件が警察にあるのか、検察に行っているのかだけでも知りたい」という場合、現在の進捗状況を捜査機関へ問い合わせて確認すること自体は可能です。

ただし、どこにどうやって確認すればよいのかという正確な手順を知っておく必要があるとともに、被疑者本人やご家族が直接問い合わせる場合には実務上の大きな壁(限界)があることも理解しておかなければなりません。

被疑者本人が担当警察官・検察庁へ問い合わせる手順

ご自身で現在の状況を確認する場合、まずは「事件がまだ警察にあるのか、それとも検察庁へ書類送検されたのか」を切り分ける必要があります。以下のステップで問い合わせを行います。

  1. 担当警察官への電話確認(警察段階)
    まずは、事情聴取を受けた警察署の代表番号に電話をかけ、聴取を担当した部署(刑事課の強行犯係、盗犯係、知能犯係、あるいは生活安全課や交通課など)の担当警察官を取り次いでもらいます。担当者が不在のことも多いため、つながった際には「〇月〇日に事情聴取を受けた〇〇(氏名)ですが、私の件は現在もそちらで捜査中でしょうか、それともすでに検察庁へ送致されましたでしょうか」と簡潔に尋ねます。
  2. 送致情報の聞き取り
    もし「すでに検察庁へ書類を送った(送致した)」と回答された場合は、必ず「①送致した日付(送致日)」「②送致先の検察庁名(〇〇地方検察庁〇〇支部、〇〇区検察庁など)」「③送致番号(教えてもらえる場合)」を確認してメモを取ってください。
  3. 検察庁への電話確認(検察段階)
    警察から送致先として案内された検察庁(国の行政機関である法務省の特別の機関)の代表電話に連絡します。電話口で自分の氏名・生年月日・事件の罪名・送致元の警察署と送致日を伝え、「事件の処分結果、または現在の担当検察官(事件担当部署)を確認したい」と申し出ます。本人確認が取れれば、現在「処分未決(捜査・検討中)」なのか、「すでに処分(不起訴など)が決まっている」のかを教えてもらえる場合があります。

不起訴処分告知書を請求して事件終了を確認する方法

すでに検察庁へ書類送検されてから数カ月が経過しており、「おそらく不起訴になったのではないかと思うが、確証が持てない」という場合に、事件の終了を公的な書面で確実に確認する方法があります。それが「不起訴処分告知書(ふきそしょぶんこくちしょ)」の交付請求です。

先ほど解説したとおり、刑事訴訟法第259条では「検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない」と定められています。同条が義務付けているのは不起訴の旨を告知すること自体ですが、実務上、被疑者側から書面による通知として「不起訴処分告知書」の交付を請求すれば、不起訴になっている場合には同告知書の交付を受けることができます。

請求の手順としては、管轄の検察庁の事件担当部署に連絡し、不起訴処分告知書の交付を希望する旨を伝えます。窓口へ直接出向いて申請書を提出するか、身分証明書のコピーと返信用封筒(切手貼付)を同封して郵送で請求するのが一般的です。

この請求を行うことには、もう一つ実務上のメリットがあります。もし請求した際に、検察庁の担当者から「まだ処分が決まっていないため、告知書は交付できません」と言われ、かつ裁判所から起訴状も届いていないのであれば、「現在も検察官のもとで捜査・検討が継続中である(まだ終わっていない)」ということが明確に判明するからです。

本人や家族による確認の限界と弁護士に依頼するメリット

上記のようにご自身で問い合わせる手順は存在するものの、実際に被疑者本人やご家族が警察・検察へ電話をかけても、思うような回答が得られず、かえって不安が募ってしまうケースが少なくありません。

まず、ご家族(親や配偶者など)が代わりに電話をしても、警察や検察は何も教えてくれないのが原則です。成人の刑事事件においては、たとえ家族であってもプライバシー保護や守秘義務、なりすまし防止(電話口では本人や家族の確認が厳密にできないため)の観点から、「ご家族の方にはお答えできません」と門前払いされてしまいます。

では、被疑者本人が電話をすれば詳しく教えてくれるかというと、そこにも大きな壁があります。警察官に「今どうなっていますか?」「いつ頃終わりますか?」と聞いても、「捜査上の秘密があるので答えられない」「現在捜査中だから、必要があればこちらから連絡する」と素っ気なくあしらわれて終わることが大半です。今後の見通しや、裏でどのような捜査が進んでいるかといった内部情報を、捜査対象である被疑者本人に教えてくれるはずがないからです。

さらに危険なのは、いつまでも連絡がこない焦りや不安から、被疑者本人が警察署へ何度も電話をかけたり、「いい加減にしてくれ、いつまで待たせるんだ!」と担当者に対して感情的な態度をとってしまったりすることです。このような行動は捜査機関の心証を著しく害するだけでなく、「精神的に不安定で逃亡や証拠隠滅をするのではないか」と警戒される要因にもなりかねません。

当事務所にも、まさにこの「連絡がこない恐怖」に限界を感じて駆け込んでこられた方がいらっしゃいました。知人との口論の末、相手を突き飛ばして怪我を負わせてしまった傷害事件のご相談です。

そのご依頼者様は、事件当日に警察署で事情聴取を受け、警察官から「今後、必要があれば連絡します」と言われて帰宅を許されました。しかし、そこから1カ月以上が過ぎても、警察からは電話一本かかってきません。「もう許されたのだろうか、それとも明日突然、職場や自宅に警察が来るのだろうか」。生きた心地がしない毎日を送る中で、ご自身で警察に電話する勇気も出ず、強い不安を抱えて当事務所の扉を叩かれました。

私はすぐにご依頼を受け、弁護人として担当警察署へ連絡を入れました。確認の結果、事件は決して終わっておらず、警察による関係者への追加聴取がこれから予定されており、現在も捜査が継続しているという事実が判明したのです。

もしご依頼者様が「1カ月連絡がないからもう終わったのだろう」と油断していたら、ある日突然の呼び出しに動揺し、不利な供述をしてしまっていたかもしれません。私は判明した状況をすぐにご依頼者様へお伝えし、今後の呼び出しに備えた心構えをご説明しました。その上で、追加の事情聴取が実施された際に、当時の事実関係を正確に整理して一貫した説明ができるよう、綿密な打ち合わせと準備を進めたのです。

もちろん、捜査機関には「捜査上の秘密」がありますから、弁護士が問い合わせたからといって、警察の手の内や証拠のすべてを開示してもらえるわけではありません。それでも、被疑者本人が直接電話をするのとは異なり、法的な代理人である弁護士が冷静に交渉の窓口となることで、「現在まだ警察で捜査中なのか」「今後、被疑者本人への追加聴取の予定はあるのか」「いつ頃検察庁へ送致される見込みか」といった、確認可能な範囲での重要な情報を引き出せるケースが多々あります。

状況が分からないまま連絡を待つのではなく、現在の捜査段階を確認して今後の聴取や処分に備えるためにも、刑事事件の経験が豊富な専門家を頼る価値は非常に大きいといえます。なお、ご自身の状況に合った相談先を見極める際の基準については、弁護士を選ぶ際の重要ポイントも判断材料として役立ちます。

連絡待ちの期間にやってはいけない行動と生活上の注意点

在宅事件として自宅での生活を許されているのは、警察や検察が「この被疑者は今のところ、逃げたり証拠を隠したりする危険性が低い」と判断しているからに過ぎません。

逆にいえば、連絡を待っている数カ月の間に被疑者が不適切な行動をとると、捜査機関から「罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがある」「逃亡のおそれがある」とみなされ、在宅事件から一転して逮捕状を請求され、突然逮捕・勾留される(身柄事件に切り替わる)リスクが常に潜んでいます。連絡がない期間も「捜査の渦中にある」という自覚を持ち、以下の3つのルールを厳守してください。

自宅でスマートフォンを見つめながら警察や検察からの連絡を待ち不安を感じている男性のイラスト

被害者や共犯者・関係者へ直接接触しない

警察から連絡がこない期間に、被疑者本人が最もやってしまいがちな危険行動が、被害者や事件の関係者への直接接触です。

「警察が動いていない今のうちに、自分で被害者に直接謝って許してもらおう」「お金を払うから被害届を取り下げてほしいと頼み込もう」と考え、被害者の自宅や職場を訪ねたり、電話やSNS、メールで連絡を取ったりする方がいます。特に、被害者が知人や同僚、元交際相手など連絡先を知っている相手である場合に、この行動に出てしまうケースが目立ちます。

しかし、たとえ謝罪や示談の申し入れが目的であっても、被疑者本人が被害者に直接接触する行為は、接触の仕方や発言内容によっては捜査機関から「被害者を威迫して証言を変えさせようとした」「執拗に連絡して被害届の取り下げを迫った(罪証隠滅のおそれがある)」と受け取られる危険があります。被害者が恐怖や負担を感じて警察に相談すれば、具体的な状況次第では罪証隠滅のおそれがあると判断され、逮捕の理由になり得ます。

これは、共犯者や事件の目撃者、職場の同僚などの関係者に対しても同様です。「警察でなんて話した?」「こう言ったことにしておいてくれ」などと連絡を取り合うことは、典型的な「口裏合わせ(証拠隠滅)」そのものです。相手のスマートフォンが警察に調べられた際、あなたからの連絡履歴やメッセージが見つかれば、言い逃れのできない証拠となります。

被害者の方へ謝罪し、被害届の取り下げや宥恕(ゆうじょ:許すこと)を求めるための被害者との示談交渉は、当事者同士での接触によるトラブルや証拠隠滅の疑いを避けるためにも、自分で行うのではなく第三者である弁護士を通じて冷静かつ適正な手続きで進めるようにしてください。

関係するデータや証拠品を勝手に削除・処分しない

初回の事情聴取でスマートフォンなどを一時的に見せただけで返却された場合や、まだ提出を求められていない場合、「もう調べは終わったから大丈夫だろう」「万が一また見られたときに不利になるから消しておこう」と考え、手元のデータや物品を処分してしまう方がいます。

具体的には、以下のような行為は絶対にやめてください。

  • スマートフォンやパソコン内のLINE・SNSのメッセージ履歴、通話履歴、写真・動画データを削除する
  • 端末を初期化する、あるいはわざと壊す・機種変更して旧端末を処分する
  • 事件当日に着用していた衣類や、事件に関連する物品・書類を捨てる

前半で解説したとおり、在宅事件では数カ月後に警察の追加聴取や、検察官からの指示による補充捜査が行われることがよくあります。その際、「やはりあの時のメッセージ履歴を正式に提出してほしい」と求められたときにデータが消去されていれば、悪質な証拠隠滅を図ったとして逮捕の引き金になるだけでなく、検察官の心証を決定的に悪化させ、起訴・不起訴の判断においても極めて不利に働きます。また、デジタルフォレンジック技術によって削除したデータが復元されれば、「わざわざ消した」という事実そのものが犯意や悪質性を裏付ける証拠として使われてしまいます。

反対に、当時の状況を示すやり取りや、自分に有利になり得る客観的なデータ・記録が手元にある場合は、一切手を加えずにそのままの状態で確実に保全(バックアップ)しておくことが、身を守る上で非常に重要です。

引っ越し・連絡先変更・海外渡航は事前に相談・届出をする

在宅事件の捜査が半年、1年と長期化すれば、その間に進学や就職・転職、家庭の事情などで引っ越し(転居)が必要になったり、スマートフォンの電話番号が変わったりすることもあるでしょう。また、仕事での長期出張や、予定していた海外旅行・留学の時期が迫ってくるケースもあります。

在宅事件の被疑者には、法律上「居住移転の自由」や「海外渡航の自由」が直ちに奪われているわけではありません。しかし、警察や検察に無断で住所や電話番号を変更し、捜査機関からの電話が不通になったり、郵送物が「あて所に尋ねあたりません」として返送されたりする事態は絶対に避けなければなりません。

一度電話に出られなかったことだけで直ちに処分が変わるわけではありませんが、無断転居などで所在不明の状態が続いたり、正当な理由なく呼び出しに応じなかったりすると、捜査機関から「逃亡のおそれがある」と判断され、具体的な事情によっては逮捕状の請求など身柄拘束の手続きにつながるおそれがあります。また、すでに起訴されていた場合に裁判所からの起訴状や召喚状を受け取れず、正当な理由なく公判期日に出頭しないといった事態になれば、勾引・勾留されたり手続き上重大な不利益を被ったりするリスクが生じます。

  • 引っ越し・電話番号の変更:転居先や新しい連絡先が決まった段階で(可能な限り変更前に)、現在事件を担当している警察官または検察庁へ連絡し、新しい住所と電話番号を必ず届け出てください。
  • 長期出張・海外渡航:特に海外への渡航は、捜査機関から「海外へ逃亡するのではないか」と警戒されやすい行動です。空港の出入国審査で止められるとは限りませんが、事前の連絡なく渡航して長期不在となり、警察や検察からの呼び出しに連絡が取れない状態が続けば、逃亡のおそれを疑われる要因になります。海外渡航や長期の不在を予定している場合は、航空券などを手配する前に弁護士に相談し、担当捜査官へ事前に事情と滞在期間を説明して呼び出し日程と調整するなど、慎重な対応が不可欠です。

連絡がない期間に弁護士へ相談・依頼すべきケース

ここまでお読みいただいてお分かりのとおり、在宅事件で警察や検察から連絡がこない数カ月間は、決して「何も起きていない安全な待ち時間」ではありません。水面下で捜査が進み、検察官があなたを起訴するか(有罪となれば前科がつく手続きに進めるか)、不起訴にするかを判断するまでの「極めて重要な準備期間(制限時間)」なのです。

在宅事件の大きな落とし穴として、逮捕・勾留されている身柄事件とは異なり、起訴される前の段階では原則として公費による「被疑者国選弁護人」を付けることができないという制度上のルールがあります。弁護士会などの法律相談窓口を利用すること自体は可能ですが、実際に捜査機関への確認や示談交渉などの弁護活動をしてもらうためには、自分で私選弁護人に依頼して動く必要があります。何もしないままでいれば、弁護人によるサポートを受けられないまま、ある日突然、検察官の処分の日を迎えることになります。

最後に、連絡がこない今のうちに弁護士へ相談・依頼して動くべき具体的なケースについて解説します。

検察官が処分を決める前に意見書や示談で不起訴を目指すとき

もしあなたが「絶対に前科をつけたくない」「不起訴処分で事件を終わらせたい」と望んでいるのであれば、警察や検察から連絡がくるのをただ待っているのは非常に危険です。なぜなら、一度検察官が「起訴(略式起訴を含む)」という処分を下してしまったあとに、その判断を覆して不起訴に戻すことは、法律上も実務上もほぼ不可能だからです。

身柄拘束されていない在宅事件では、どうしても被疑者ご本人が「逮捕されなかったから大したことはないだろう」と事件の進行を軽く考えてしまい、検察庁から呼び出しが来るまで何も準備をしていないケースが少なくありません。

当事務所で実際に扱った暴行事件の事例をご紹介します。ご依頼者様は、勤務先で同僚と激しい口論になり、相手の胸ぐらをつかんだとして警察署で事情聴取を受けました。その後、約2カ月間は警察から何の連絡もなかったため、「このまま注意だけで終わるのだろう」と考えていたそうです。ところが2カ月が過ぎた頃、担当警察官から突然電話があり、「事件を検察庁へ書類送致する予定だ」と告げられました。

「検察に送られたら、起訴されて前科がつくのではないか」。急に現実味を帯びた恐怖に襲われたご依頼者様は、慌てて当事務所へご相談に来られました。

事件を受任した私は、ただちに担当警察署へ連絡して書類送致の正確な時期を確認するとともに、ご依頼者様から事件当時の状況を徹底的に聴取しました。詳しくお話を伺うと、警察の調書だけでは見えにくい重要な背景が浮かび上がってきました。ご依頼者様が一方的に暴力を振るったのではなく、相手側から執拗な挑発を受け続け、口論の末に一時的に胸ぐらをつかんでしまったという経緯があったのです。さらに、事件後にはご依頼者様が相手方に直接謝罪し、相手方もすでにその謝罪を受け入れて職場での関係が修復されていることも分かりました。

私は、検察官からご依頼者様へ呼び出しがかかるのを待つのではなく、先手を打って動くことを決めました。事件に至った酌むべき経緯、ご依頼者様の深い反省状況、そして被害者との関係修復がすでに完了している事実などを法的な観点から整理した「意見書」を作成し、処分が決まる前の段階で担当検察官へ提出したのです。あわせて、その後検察官から呼び出しを受けたご依頼者様に対し、取り調べで想定される質問や、自分の言葉で冷静に説明すべき事項を事前に整理して助言しました。その結果、検察官がこちらの主張と情状を十分に汲み取り、最終的に不起訴処分を勝ち取ることができました。

法律事務所で弁護士に在宅事件の進捗確認や今後の対応について相談し安心する依頼者のイラスト

このように、検察官から連絡がない期間は、不起訴を手繰り寄せるための貴重な活動期間です。弁護士は、検察官が起訴・不起訴の判断を下す前に、以下のような被疑者に有利な事情や証拠を収集・整理し、意見書として検察官へ提出します。

  • 被疑者が事実を認め、真摯に反省していること
  • 被害者に対して謝罪と被害弁償を行い、示談が成立していること(宥恕を得ていること)
  • 犯行に至った経緯や動機に、同情すべき事情(相手の挑発など)があること
  • 家族の監督体制や環境改善、専門機関への通院など、具体的な再犯防止策を講じていること
  • 前科・前歴がなく、定職に就いて真面目に社会生活を送っていること

もちろん、意見書を提出すればどのような事件でも不起訴になるわけではありません。しかし、警察が作成する捜査書類は基本的に「処罰を求める側」の視点で作られています。検察官がその書類だけを読んで処分を決めてしまう前に、弁護士から被疑者側に有利な事情や証拠を整理した意見書を提出し、処分の判断材料にしてもらうことは実務上非常に重要です。

今後の見通しを立てて職場や家族への影響を防ぎたいとき

ここまで解説してきた内容を踏まえ、現在警察や検察からの連絡待ちで不安を抱えている方は、ご自身の状況が以下のいずれかに当てはまる場合、できるだけ早い段階で弁護士へ相談されることを強くおすすめします。

  • 事情聴取から1カ月以上連絡がなく、現在どの捜査段階にあるのか、いつ頃どんな処分になりそうか見通しを知りたいとき
  • 略式罰金や公判請求(起訴後の有罪判決)によって前科がつくことを避け、被害者との示談交渉や検察官への意見書提出によって不起訴を目指したいとき
  • 警察や検察から自宅へ電話や郵送物が届くことで、同居する家族や職場に事件のことを知られるのを防ぎたいとき(弁護士が就けば、捜査機関からの連絡窓口を原則として弁護士事務所へ一本化するよう働きかけることが可能です)
  • 今後予想される追加の事情聴取や検察庁からの呼び出し、略式起訴の打診に対して、どう受け答えすべきか事前に準備を整えておきたいとき

いつ鳴るか分からない電話に怯えながら、何カ月も一人で悩み続ける必要はありません。福岡フォワード法律事務所では、「依頼者をただ守るだけでなく、未来へ前進するために積極的に動いて闘う『攻めの弁護』」を理念に掲げています。代表弁護士の秀﨑は、これまで約5,000件以上のご相談に向き合い、数多くの刑事事件で迅速な捜査機関への確認や粘り強い示談交渉、検察官への働きかけを行ってまいりました。

「弁護士に相談するのは敷居が高い」と感じていらっしゃる方も、どうぞご安心ください。当事務所では、暗い表情で来所されたご相談者様が、お帰りの際には少しでも安心した笑顔を取り戻せるよう、親身で話しやすい雰囲気づくりを徹底しております。警察や検察から連絡がこない今のうちに、現在の進捗確認や今後の取り調べへの準備、示談交渉・意見書提出の検討などを進めるためにも、まずは一度、当事務所のお問い合わせページよりお気軽にご相談ください。

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