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W不倫(ダブル不倫)とは?通常の不倫との決定的な違い
「W不倫(ダブル不倫)」とは、既婚者同士が不倫関係になることを指します。しかし、その本質は単に「既婚者同士」という点だけではありません。最大の特徴は、不倫をした当事者2名とその配偶者2名、合計4名が関係者となり、それぞれの利害が複雑に絡み合うという点にあります。この「4者関係」こそが、通常の不倫問題とは一線を画す、W不倫の特殊性と難しさの根源なのです。
もしあなたが今、W不倫の問題で心を痛めているのなら、それは決して一人で抱え込めるような簡単な問題ではありません。この記事では、W不倫特有のリスクと、複雑に絡み合った糸を解きほぐすための具体的な解決策を、男女問題に詳しい弁護士が分かりやすく解説します。
登場人物は4人、利害関係が複雑に絡み合う
W不倫の問題を理解するためには、まず登場人物の関係性を正確に把握することが重要です。
- あなた(Aさん)と、あなたの配偶者(Bさん)
- 不倫相手(Cさん)と、その配偶者(Dさん)
この4人が登場人物です。仮に、あなた(Aさん)と不倫相手(Cさん)が不倫関係にあったとします。この場合、慰謝料を請求する権利を持つのは、不倫をされた側であるあなたの配偶者(Bさん)と、相手の配偶者(Dさん)の2人です。そして、請求される側は、不倫をしたあなた(Aさん)と不倫相手(Cさん)の2人になります。

つまり、BさんはAさんとCさんに対して、DさんはAさんとCさんに対して、それぞれ慰謝料を請求できる権利があるのです。誰が誰に請求し、誰が誰に支払うのか。そして、支払ったお金は最終的に誰が負担するのか。このように、複数の矢印が飛び交うことで、当事者だけでの話し合いは極めて困難になります。
なぜハマる?W不倫に陥りやすい人の心理と特徴
W不倫に陥るきっかけは様々ですが、いくつかの共通した心理的特徴が見られます。
- 家庭での不満や寂しさを共有できる:お互いに家庭を持つからこそ、配偶者への不満や子育ての悩みなどを深く共感し合え、急速に関係が深まることがあります。
- 「家庭を壊すつもりはない」という共通認識:お互いに家庭があるため、「本気ではない」「あくまで割り切った関係」という暗黙の了解が生まれやすく、罪悪感が薄れがちです。
- 同じ職場など、日常的な接点がある:毎日顔を合わせる職場の同僚などは、仕事の相談などを通じて自然と距離が縮まり、不倫関係に発展しやすい環境と言えます。
こうした心理的な背景から、「まさか自分が」と思っていた方が、気づかぬうちにW不倫の当事者になってしまうケースは少なくありません。ご自身の状況を客観的に見つめ直すことが、解決への第一歩となります。
W不倫が発覚したとき、絶対にやってはいけない3つのこと
W不倫が発覚した直後は、誰しも冷静ではいられません。しかし、感情的な行動は事態をさらに悪化させ、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。まずは落ち着いて、以下の3つの行動は絶対に避けてください。
感情のままに相手の配偶者に連絡する
最もやってしまいがちで、最も危険な行動です。怒りや悲しみのあまり、不倫相手の配偶者に直接連絡を取ってしまうと、どうなるでしょうか。
- 相手に「脅された」と主張され、逆に不利な立場に追い込まれる可能性がある。
- 感情的な発言を録音され、後の交渉で不利な証拠として使われる恐れがある。
- 相手方が冷静に弁護士を立てる時間を与えてしまい、交渉の主導権を完全に握られてしまう。
感情に任せた行動は、百害あって一利なしです。まずは専門家である弁護士に相談し、可能な対応を検討することが一般的に有効です。
証拠がないまま不倫相手と話し合う
不倫の事実を問い詰める前に、まずは客観的な証拠を確保することが極めて重要です。証拠がない状態で話し合いを始めても、「そんな事実はない」としらを切られたり、巧妙に言い逃れをされたりするだけです。それどころか、相手に警戒され、LINEの履歴を消去されたり、スマホを買い替えられたりするなど、証拠隠滅を図る時間を与えてしまいます。
法的に有効な証拠がどのようなものかについては、「不倫慰謝料請求で必要な証拠」のページでも詳しく解説していますが、まずは焦らず、冷静に証拠を集めることから始めましょう。
安易に念書や示談書にサインする
相手方から「これを認めれば穏便に済ませる」などと言われ、念書や示談書へのサインを求められることがあります。しかし、その内容を十分に理解しないまま安易にサインをしてはいけません。
一度書面に署名・押印してしまうと、法的な拘束力が生じ、後から「知らなかった」「無理やり書かされた」と主張しても、その内容を覆すことは非常に困難です。特にW不倫の場合、後述する「求償権」の放棄など、専門的な知識がないと理解できない不利な条項が含まれている可能性もあります。サインする前に可能な限り弁護士に相談することをお勧めします。
慰謝料はどうなる?W不倫の請求で知るべき「4者和解」
W不倫の慰謝料問題を解決する上で、鍵となるのが「4者和解」という考え方です。ここでは、W不倫特有の金銭問題である「求償権」のリスクと、その最善の解決策となりうる「4者ゼロ和解」について解説します。
慰謝料請求がループする?「求償権」のリスク
「求償権(きゅうしょうけん)」とは、少し難しい言葉ですが、W不倫問題を理解する上で非常に重要な権利です。不倫の慰謝料は、不倫をした2人が連帯して支払う義務を負います。そのため、例えばあなたの配偶者が、不倫相手から慰謝料200万円を全額受け取ったとします。これで解決したと思いきや、不倫相手は「2人でやったことなのだから、半分の100万円はあなたが負担すべきだ」と、あなたに対して支払いを求めてくる可能性があるのです。これが求償権です。
この求償権の存在を知らずに当事者同士で話を進めると、あとから自身が不倫相手から求償権を行使された場合に困ることになります。
また、当然のことながら、不倫相手の配偶者からあなたが請求されるリスクもあります。そうなると、「片方の夫婦間では解決したはずなのに、後からもう一方の当事者から請求が来た」というように、問題がいつまでも終わらない泥沼の状態に陥ってしまう危険性があります。
最も穏便な解決策「4者ゼロ和解」とは?
このような複雑な状況を、最も穏便に、かつ最終的に解決する方法の一つが「4者ゼロ和解」です。これは、関係者である4人全員が合意の上で、「お互いに慰謝料を請求しない」と取り決める解決方法です。
例えば、双方の夫婦がどちらも「離婚はしたくない」「関係を修復したい」と考えている場合、慰謝料の支払いでお金が動くと、それぞれの家計にダメージを与え、夫婦関係の再構築の妨げになる可能性があります。それならば、お互いに慰謝料請求権を放棄し、金銭的な負担なくこの問題を終わらせよう、というのがゼロ和解の考え方です。
もちろん、これは4人全員の合意があって初めて成立するものです。しかし、特に双方ともに離婚を望まない場合には、非常に有効で現実的な解決策となり得ます。
【参考事例】弁護士の交渉で、金銭負担ゼロの「4者和解」を実現
※以下は説明目的の仮想事例です。
当事務所にご相談に来られたのは、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたAさん(妻)でした。Aさんのご家庭も、相手方のご家庭も、どちらも「離婚はしない」という意向でした。この状況でAさんが相手方の要求通りに慰謝料を支払ってしまうと、今度はAさんの夫が不倫相手に対して慰謝料を請求し、さらに不倫相手がAさんに求償権を行使する…という複雑な事態に陥る可能性がありました。
そこで私は、すぐに相手方の代理人弁護士と交渉を開始。双方の夫婦が離婚を望んでいないこと、慰謝料の支払いが双方の家計に与えるダメージ、そして何よりこの問題を早期に終結させることが全員にとって最善の利益であることを冷静に説きました。
粘り強い交渉の結果、最終的には関係者4名全員が納得する形で「お互いに慰謝料を請求しない」という4者ゼロ和解を成立させることができました。交渉により、当事務所の依頼者は金銭的負担を回避できた例があります(個別の事案により結果は異なります)。
このような複雑な交渉を当事者だけでまとめるのは至難の業です。専門家である弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、全員が納得できる着地点を見出すことができるのです。
あなたの望みは?状況別に見るW不倫の解決への道筋
W不倫問題の解決策は、あなたが今後どうしたいかによって大きく異なります。「離婚して再出発したい」のか、それとも「夫婦関係を修復したい」のか。ご自身の希望に合わせた解決の道筋を考えましょう。

ケース1:離婚して新たな人生を歩みたい場合
配偶者の不倫を許せず、離婚を決意した場合、解決すべき問題は多岐にわたります。
- 不倫をした配偶者と不倫相手への慰謝料請求
- 財産分与(夫婦で築いた財産をどう分けるか)
- 親権(未成年の子どもがいる場合)
- 養育費
W不倫が絡む離婚協議は、感情的な対立が激しくなり、当事者だけでの話し合いは困難を極めます。弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として相手方と冷静に交渉し、慰謝料や財産分与などであなたが正当な利益を得られるよう、法的な観点から全力でサポートします。
ケース2:夫婦関係を修復し、やり直したい場合
離婚はせず、夫婦関係を再構築したいと望むのであれば、前述した「4者ゼロ和解」が現実的なゴールとなります。そのためには、相手方夫婦も離婚を望んでいないことが前提となります。
この場合、弁護士は4者全員の利害を調整し、全員が納得できる和解契約書を作成する役割を担います。感情的になりがちな当事者の間に専門家が入ることで、冷静な話し合いが可能となり、スムーズな合意形成を目指せます。「二度と会わない」といった接触禁止の条項を盛り込むなど、将来の不安を取り除くための取り決めをすることも重要です。
W不倫問題は弁護士への早期相談が解決の鍵
ここまでお読みいただき、W不倫問題がいかに特殊で複雑か、お分かりいただけたかと思います。登場人物が4人もいるため、当事者だけで解決しようとすると、かえって問題をこじらせ、泥沼化させてしまうケースが後を絶ちません。
もしあなたが今、W不倫の問題で悩んでいるのなら、どうか一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で私たち弁護士にご相談ください。
W不倫のお悩みは、まず弁護士にご相談ください
複雑な4者交渉を有利に進められる
弁護士は、法律の専門家であると同時に、交渉のプロフェッショナルです。4者の複雑な利害関係を正確に把握し、法的な根拠に基づいて、あなたにとって最も有利な解決策を導き出すための交渉戦略を立てることができます。
特に4者和解のような高度な交渉では、弁護士の存在が不可欠です。感情的な対立に巻き込まれることなく、冷静かつ戦略的に交渉を進め、最善の着地点を目指します。
精神的な負担を大幅に軽減できる
W不倫問題は、心身ともに大きなストレスを伴います。相手方やその配偶者と直接やり取りをすることは、精神的に非常に辛いものです。
弁護士にご依頼いただければ、弁護士が交渉窓口を担うことで、当事者間の直接交渉を避けられる場合があります。これにより精神的負担の軽減が期待できることがあります(効果は個別事情により異なります)。当事務所は依頼者の負担軽減を重視し、迅速かつ丁寧な対応を心がけています。
当事務所は土日祝日および平日夜間(〜21時)に相談受付を行う場合があります。詳しくはお問い合わせください。あなたが前へ進むための一歩を、全力でサポートします。
