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不貞慰謝料だけじゃない!請求できる可能性がある4つの費用
「配偶者に裏切られた精神的な苦痛は、慰謝料だけでは到底埋め合わせられない…」
「不貞の証拠を集めるために探偵に依頼した費用や、ショックで心療内科に通った治療費も、相手に請求したい…」
パートナーの不貞行為によって深く傷つき、このような憤りややるせない思いを抱えている方は、決して少なくありません。
精神的なダメージはもちろんのこと、弁護士への相談費用や調査費用など、経済的な負担も重くのしかかってきますよね。
この記事では、そうした切実な悩みを抱えるあなたのために、不貞慰謝料の他に請求できる可能性がある費用について、弁護士が一つひとつ丁寧に解説していきます。具体的には、以下の4つの費用が対象となります。
- 弁護士費用
- 調査費用(探偵・興信所など)
- 治療費
- 休業損害
これらの費用を請求できるかどうかを判断する上で、法律の世界には「重要」な考え方が存在します。それを知ることで、ご自身の状況を客観的に見つめ直し、正当な権利を主張するための道筋が見えてくるはずです。あなたが抱えるその疑問、弁護士が一つひとつお答えします。不倫慰謝料請求の具体的な内容については、こちらの記事もご参照ください。不倫慰謝料請求の内容
請求できるかを分ける重要ポイント「相当因果関係」とは?
不貞行為に関連して発生した費用を損害として請求できるかどうか。その判断の重要な基準となるのが、「相当因果関係(そうとういんがかんけい)」という法律上の考え方です。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、ご安心ください。裁判所が判断する際の視点は、実はとてもシンプルです。
- 「その不貞行為がなければ、その出費は本当に発生しなかったか?」(事実的な因果関係)
- 「不貞行為をしたら、そのような出費が発生することは、社会通念上も予測できるか?」(相当性)
この2つの問いの両方に「YES」と答えられる場合に限り、その費用は「不貞行為と相当因果関係のある損害」として、相手方に請求することが認められるのです。
例えば、交通事故を想像してみてください。事故でケガをすれば、治療費がかかります。これは「事故がなければ治療費は発生しなかった」ですし、「事故を起こせば相手にケガをさせ、治療費が発生することは予測できる」ので、相当因果関係が認められます。しかし、事故のショックで競馬に大金をつぎ込んでしまったとしても、その損失まで加害者に請求することはできません。なぜなら、「事故を起こしたからといって、被害者が競馬で大損することまでは通常予測できない」からです。
このように、「相当因果関係」は、損害賠償の範囲を常識的な範囲に限定するための、非常に重要な物差しなのです。この考え方を頭に入れておくことで、この後の各費用の解説がより深く理解できるはずです。

【費用別】請求が認められるケース・認められないケース
それでは、先ほど解説した「相当因果関係」という物差しを使って、具体的な4つの費用項目について、請求が認められる場合と認められない場合を詳しく見ていきましょう。
弁護士費用:慰謝料の約1割が認められるのが実務の傾向
結論から言うと、弁護士費用は、不法行為(不貞行為)と相当因果関係が認められやすい費用です。
なぜなら、不貞行為によって慰謝料を請求するという法的な権利を実現するためには、弁護士に依頼することが有効かつ適切な手段と考えられるからです。「不貞行為がなければ、弁護士に依頼する必要もなかった」わけですから、因果関係は明確ですよね。
ただし、注意点があります。それは、実際にあなたが弁護士事務所に支払った着手金や報酬金の全額が認められるわけではない、ということです。
実務上、裁判所が損害として認める弁護士費用は、「裁判で認められた慰謝料額の約1割」が目安となります。例えば、裁判の結果、200万円の慰謝料が認められた場合、その1割である20万円が弁護士費用相当の損害として上乗せされ、合計220万円の支払いが相手方に命じられる、というイメージです。
これは、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、長年の裁判実務でほぼ定着している運用です。私の弁護士としての経験上も、慰謝料の1割という金額であれば、ほぼ問題なく認められていると感じます。ご自身の弁護士費用を考える上での一つの基準としてください。
調査費用(探偵費用):証拠収集の必要性が厳しく判断される
不貞の証拠を押さえるために探偵や興信所に依頼した場合、その調査費用も相手に請求したいと考えるのは当然のことでしょう。しかし、調査費用については、請求が認められるハードルが高いのが現実です。
なぜなら、裁判所は「そもそも、高額な費用をかけて探偵に依頼することが、不貞の事実を立証するために本当に必要不可欠だったのか?」という点を非常に厳しく見るからです。近年では、探偵への依頼を社会通念上、当然の行動とまでは言えないとする厳しい判断も出ています(例:東京高裁令和6年1月17日判決)。
では、どのような場合に認められる可能性があるのでしょうか。過去の裁判例を分析すると、ポイントが見えてきます。
- 認められやすいケース:相手方が不貞の事実を頑なに否認しており、探偵の調査報告書がなければ不貞行為を立証することが事実上不可能であった場合など、調査の必要性・不可欠性が極めて高いと判断された場合。
- 認められにくいケース:相手方が不貞の事実を概ね認めていたり、メールや写真など他の証拠で不貞の事実がある程度推測できるにもかかわらず調査を依頼した場合など、調査の必要性が低いと判断された場合。
つまり、「他に手段がなく、やむを得ず探偵に頼るしかなかった」という特別な事情を主張・立証できなければ、調査費用を損害として認めてもらうのは難しい、ということです。安易に高額な調査を依頼する前に、まずは弁護士に相談し、本当に調査が必要かどうかを慎重に検討することが重要です。
治療費・休業損害:原則として相当因果関係は認められにくい
「配偶者の裏切りが原因でうつ病になり、心療内科に通っている」
「ショックで仕事に行けなくなり、給料が減ってしまった」
このようなケースで発生した治療費や休業損害も、不貞行為がなければ生じなかった損害だと言えるかもしれません。しかし、裁判実務上、これらの費用と不貞行為との相当因果関係を認めてもらうのは、かなり困難であると言わざるを得ません。

その理由は、人の心身の不調や休業には、不貞行為以外にも、本人が元々持っていた性格やストレス耐性(素因)、職場や家庭の他の問題など、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられるからです。そのため、「不貞行為だけが直接の原因でうつ病になった」「不貞行為だけが原因で仕事を休んだ」と法的に断定することが、非常に難しいのです。
私の経験上も、裁判所がこれらの損害と不貞行為との因果関係を認めることは、残念ながら多いとは言えません。
ただし、可能性が完全にゼロというわけではありません。診断書などの客観的な証拠によって、不貞行為と損害発生との結びつきを説得力をもって立証することができれば、例外的に損害として認められる余地も残されています。主婦(主夫)の家事労働が金銭的に評価され、休業損害として認められるケースがあるのと同様に、状況次第では主張の組み立て方が重要になります。
請求が難しい費用を「慰謝料の増額事由」として主張する戦略
ここまで読んで、「治療費や高額な調査費用は、結局泣き寝入りするしかないのか…」と落胆されたかもしれません。もっとも、別の主張方法を検討できる場合があります。
それは、これらの費用を「損害」として個別に請求するのではなく、「あなたが受けた精神的苦痛の大きさを証明する事情」として主張し、メインである慰謝料そのものを増額させる、という戦略です。
慰謝料の金額は、不貞行為の態様や期間、婚姻期間、子の有無など様々な事情を考慮して決められます。その考慮要素の一つに、「被害者が受けた精神的苦痛の程度」があります。
そこで、次のように主張を組み立てるのです。
「不貞行為による精神的ショックはあまりに大きく、うつ病と診断され、通院治療を余儀なくされました(証拠として診断書を提出)。」
「相手方が嘘をつき続けたため、やむを得ず高額な費用をかけて調査会社に依頼せざるを得ない状況にまで追い込まれました(証拠として調査報告書と領収書を提出)。」
このように主張することで、かかった費用そのものではなく、「通院や調査をせざるを得ないほど、精神的に追い詰められた」という事実を裁判所に強く印象づけることができます。その結果、裁判官が「これは通常よりも精神的苦痛が大きいケースだ」と判断し、慰謝料の算定において有利に働き、結果的に慰謝料額が増額される可能性があるのです。
これは、法律の知識と実務経験を持つ弁護士だからこそ立てられる戦略の一つです。どの費用を損害として請求し、どの事実を慰謝料の増額事由として主張するべきか、的確な見極めが重要となります。
まとめ|正しい知識で、あなたの正当な権利を守るために
今回は、不貞慰謝料の他に請求できる可能性がある費用について解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 不貞慰謝料以外の費用を請求できるかの鍵は「相当因果関係」の証明にある。
- 弁護士費用は、慰謝料の約1割が損害として認められやすい。
- 調査費用(探偵費用)は、「調査の必要性・不可欠性」が厳しく判断され、ハードルが高い。
- 治療費や休業損害は、不貞行為だけが原因であることの証明が難しく、原則として認められにくい。
- 直接請求が難しい費用も、「慰謝料の増額事由」として主張することで、最終的に有利な結果につながる可能性がある。
ご覧いただいたように、どの費用が請求でき、どの費用が難しいのかを一般の方がご自身で判断するのは、決して簡単ではありません。正しい知識がなければ、本来得られるはずの賠償を諦めてしまったり、逆に無謀な請求をして時間や労力を無駄にしてしまうリスクもあります。
あなたの受けた損害の範囲を正確に見極め、正当な権利を実現するためには、個別の事情に応じた専門的な法的判断が不可欠です。一人で抱え込まず、まずは専門家である弁護士に話してみませんか。福岡フォワード法律事務所では、あなたの状況を丁寧にお伺いし、事案に応じた解決策をご提案します。
まずは法律相談から、次の一歩を踏み出しましょう。
