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債権の特定
まずは、請求したい債権が法的にどういった性質の債権なのかを特定します。債権といってもたくさんあります。大きくは契約関係に基づき発生する債権と、契約に基づかずに発生する債権があります。
前者は、売買契約に基づく代金請求権、消費貸借契約に基づく貸金返還請求権などです。この類型は、契約書があることが多いと思いますが、契約書があれば債権の存在を立証することは比較的容易です。
後者は、不法行為に基づく損害賠償請求権、不当利得に基づく返還請求権などです。この類型は契約書がないことがほとんどですから、ご相談者様から事実関係を聞き取り、その他の証拠書類があれば分析・検討して立証を考えていくことになります。
債務者の所在の確認
債務者が転居したり、電話番号が変更になったりするなど、音信不通・行方不明になっていることがあります。債務者の住所地がわからなければ、弁護士が通知書を発送しても届きませんし、電話番号がわからなければ電話交渉をすることもできません。
住所については、以前住んでいた住所さえ判明していれば、職務上請求という方法により債務者の住民票の除票を取り寄せ、現在の住所を調査することができます。
また、まったく住所が不明の場合でも、電話番号がわかっていれば、弁護士会の照会手続(いわゆる23条照会)を用いて、現在の住所を調査することができます。さらには、相手方の銀行口座情報が振込明細書などで判明していれば、そこから住所の調査をすることもできます。
このように、弁護士は債務者の所在を徹底的に調査して突き止めていきます。
任意交渉で回収する
まずは任意交渉を試みます。任意交渉とは、訴訟外で弁護士が相手方に連絡をとり、債務を支払うように働きかけます。基本的には特定記録や内容証明郵便で請求書を送付して交渉していきます。
また、相手方の電話番号が判明していれば電話交渉も行います。相手方と交渉した結果、話がまとまるようであれば示談書を作成し、支払期限に入金してもらって一応の事件の区切りがつきます。
なお、相手方がしっかりと支払いをするように、公証役場に行って公証人に公正証書を作成してもらうこともあります。強制執行認諾文言という条項を設ければ、不履行があった際には、裁判を経ることなく強制執行ができます。
法的手続で回収する
相手方と任意交渉がうまくいかない場合には、法的手続で回収を試みます。法的手続とは裁判所を通す手続であり、支払督促や訴訟、調停があります。それぞれメリット、デメリットがあるので、個別の案件に一番適した法的手続を弁護士が検討します。
法的手続をとると、裁判所からの呼び出し状が相手方の自宅に送達されますので、心理的なプレッシャーを与えることができます。法的手続では、判決が出て終わることもありますが、裁判官がお互いの言い分を聞いて解決案を示し、和解で終わることも多いです。
執行手続で回収する
法的手続を行った結果、勝訴判決や支払を認める和解調書をもらった場合、これらを債務名義といいます。債務名義があれば、相手方が仮に支払いをしない場合には強制執行をすることができるようになります。
強制執行の種類としては、不動産執行、動産執行(執行官が債務者の自宅に行き、金目のものを持って帰ります。)、債権執行(相手方が給与所得者である場合、勤務先に対する給与債権を差し押さえる給与差押え、預金口座がわかっている場合には、銀行に対する預金債権を差し押さえる預金差押えがあります。)
財産開示手続で回収する
直接の回収手続ではないですが、上記の執行手続は、相手方の財産が判明していないと回収できません。とくに相手方の勤務先を調べるのは容易ではありません。そこで、裁判所に対し、債務者の財産開示を申し立てる方法があります。
財産開示を申し立てると、裁判所から債務者に対し、出頭命令がなされます。財産開示手続では、裁判所が財産開示期日を指定し、債務者は、裁判所にて自身の財産(勤務先や預金口座など)の目録を申告しなければなりません。
債権者は、この債務者の陳述によって知った財産に対し、別途強制執行の申立をすることができます。なお、債務者が不出頭や嘘の説明をした場合、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑罰を科されます。