肉体関係がないのに慰謝料請求された

不貞とは肉体関係のことである

肉体関係とは性交渉の有無、すなわちSEXしたかどうかを指すのが一般的です。最高裁判所は、不貞(不倫)とは、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」であるとしています(最判昭和48年11月15日判決)。

もっとも、挿入行為を伴わないSEX、たとえばオーラルセックスであっても「性交類似行為」として、肉体関係ありとされる可能性は高いと思います。

肉体関係がなければ原則として慰謝料を支払う必要はない

もし、あなたが、肉体関係をもっていない場合には、不法行為となる不倫をしていないのですから、原則として、慰謝料を支払う義務はありません。よって、相手方に対してはその旨主張していく必要があります。

相手方が、配偶者が不倫(不貞行為)をしたのではないかと勘違いしていることはけっこうあります。このパターンでは、相手方は、配偶者があなたと肉体関係を持ったとする決定的な証拠は持っていません。

訴訟では、原告(訴えを提起する者)に立証責任がありますから、あなたが不倫の事実を否定し、相手方が不倫の証拠を提出して不貞行為の事実を立証できない場合には、あなたは勝訴するので、慰謝料を支払う必要はありません。

肉体関係がないのに慰謝料を支払う場合がある

ところが、SEXはしていない場合でも、慰謝料の支払義務を認めた裁判例もありますので注意が必要です。

① SEX以外の身体接触があった場合

「体を触った」「キスした」「抱き合った」などの挿入を伴わない身体接触があったことを理由に慰謝料の支払義務を認めた裁判例があります。

これは、肉体関係がなかったとしても、相手方夫婦の結婚生活を破壊する可能性がある(配偶者が嫌な気持ちを抱いて夫婦関係が悪化する)ことから、不法行為責任を認めたものと思われます。

もっとも、SEXはしていないのですから、SEXをした場合に比べると、慰謝料の金額は低くなる(50万円前後)のではないかと思います。

② 一切の身体接触がなかった場合

例えば、食事などに行っただけとか、メールをしただけだといった場合に慰謝料請求が認められる可能性はかなり低いと思います。身体接触がない交際であれば、通常は夫婦の結婚生活を破壊するとまでは認定できないからです。

しかし、たとえば、メールで「愛しているよ」などと恋愛感情を表現する内容を頻繁に送ってしまうと、仮に肉体関係がなかったこと自体は争いがなかったとしても、そのやりとりを見た、お相手の配偶者は恋愛関係に発展しているのではないかと不安になり、結婚生活にヒビが入る可能性もあります。

このような場合、「婚姻生活が脅かされた」と認定され、慰謝料の支払義務を認めた裁判例もありますので注意が必要です。

また、肉体関係を推認させる直接的な証拠(写真や動画)はなかったとしても、メールで親密なやりとりをしていた状況から、肉体関係があったことを推認されてしまう可能性もあります。

肉体関係がないのに慰謝料請求されたら

肉体関係(不貞行為)がない場合でも、あなたが親しくデートを重ねていたりプレゼントを渡したりしていた場合には、相手方が弁護士に依頼し、慰謝料請求を受ける可能性があります。

そうした場合、すぐに弁護士を探して相談し、可能であれば代理人になって交渉してもらいましょう。相手方の請求額を大幅に減額できる可能性があります。肉体関係はないこと、したがって慰謝料の支払義務はないことを徹底して主張し、結果として1円も慰謝料を支払わずに解決した事例もあります。

他方、相手方が訴訟提起してくる可能性をケアし、10~20万円程度の少額の慰謝料を支払って円満に解決することもあります。

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