大切なお金を、必ず返してくれるものと信じて貸したのに、返してくれなかったら非常に腹が立ちますよね。ここでは、債権回収の方法を概観します。
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内容証明郵便
内容証明郵便とは、郵便局が、通知書に記載した内容を証明してくれる郵便になります。誰でも作成することができますが、一枚に記載できる行数や文字数が決まっていたり、添付資料や写真などは同封できないなど、細かな制約があります。
なお、この内容証明郵便は法的手続ではないので、強制力はありません。しかし、特殊な郵便になりますので、債務者にプレッシャーを与えることができる場合もあるでしょう。また、期限の定めのない債務の催告や、時効の完成を猶予させる場面でも有用となります。
公正証書
公正証書とは、公証役場に行って、公証人という公務員に作成してもらう公文書のことです。
公証人が当事者の嘱託により作成した公正証書には、非常に強力な証拠力があります。
金銭消費貸借契約などの金銭の支払を目的とする債務についての公正証書に、「債務者が金銭の支払をしないときは、直ちに強制執行に服する旨の陳述」が記載されている場合には、金銭債務の不履行があったときは、裁判手続を経ることなく、直ちに強制執行をすることができます(執行証書といいます)。
このように、相手方が支払義務を認めている場合には、公正証書の作成が有効な手段となります。
支払督促
支払督促とは、簡易裁判所に申し立てることにより、裁判所から債務者に対し、督促状を送ってもらう手続きです。
メリットとしては、通常訴訟に比べ、手続が簡単で、手数料(印紙代)も、通常訴訟の2分の1ですみます。デメリットとしては、支払督促の内容に対し、債務者が異議を申し立てると、結局通常訴訟に移行するので二度手間になること、債務者の住所地を管轄する裁判所が管轄裁判所になることです(たとえば債務者が東京に住んでいれば東京の簡易裁判所に申し立てる必要があります)。
なお、債務者から異議が出なかった場合でも、債権者は一定の期間内に仮執行宣言(強制執行ができる効力のこと)の申立てをしなければなりません。
少額訴訟
少額訴訟とは、債権が60万円以下で、事件が簡単な場合に提起できる訴訟です。
メリットとしては、1回の審理で判決をもらうことができることです。デメリットとしては、債務者から通常の訴訟で審理をしてほしいと申し出をされてしまうと、結局、通常訴訟に移行してしまう点です。
少額訴訟は、証拠関係が簡明で、債務者が争ってくることがほぼ予想されない場合に有用となります。
通常訴訟
一番スタンダードな法的手続になります。請求する額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円以上の場合は地方裁判所が管轄となります(事物管轄)。通常訴訟は、相手方が争ってくれば半年から1年半ほどかかることもあります。他方、相手方が争わない場合には、1回で結審することもあります。
通常訴訟を提起する場合には、請求の趣旨や請求原因を訴状に記載することはもちろん、その後も、争点についての法律的な主張反論(準備書面)や証拠の立証趣旨を説明した文書(証拠説明書)が必要になりますので、弁護士に依頼したほうがいいでしょう。
なお、訴訟は判決ではなく和解で終わることもけっこうあります。
民事調停
民事調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、債権者(申立人)と債務者(相手方)が、話し合いによりお互いが合意することで、紛争を解決する手続です。調停では、一般市民の中から選ばれた調停委員が、裁判官と一緒に紛争の解決にあたります。
調停のメリットは、手続が簡単であること、費用が低額であること、早く解決できること(3か月ほど)です。