消費者契約法の不実告知とは?契約取消の要件と返金請求を弁護士が解説

Worried woman sitting at a desk with scattered papers, a man in a suit speaks reassuringly from a spotlighted area above them, text banner reads: “ご安心ください、解決の糸口は必ずあります。”

このページの目次

「話が違う…」その契約、不実告知なら取り消せるかもしれません

「この投資は将来必ず値上がりしますよ」「この機械を使えば電気代が半分になります」——。事業者のそんな言葉を信じて契約したのに、後から内容が全く違っていたと気づいたとき、心に浮かぶのは「騙されたかもしれない」という強い不安や怒りではないでしょうか。

事業者の説明と事実が異なるとき、多くの方が「一度契約してしまったから仕方ない」と諦めてしまうかもしれません。しかし、ご安心ください。消費者と事業者の間には、情報量や交渉力に大きな差があることを前提に、困っている消費者を守るための強力な法律が存在します。それが「消費者契約法」です。

特に、事業者が契約を結ばせるために事実と違う説明をすることは「不実告知」と呼ばれ、この法律によって契約そのものを取り消せる可能性があります。この記事では、どのようなケースが不実告知にあたるのか、契約を取り消してお金を取り戻すためには何が必要なのかを、法律の専門家である弁護士が分かりやすく解説していきます。

もしあなたが「話が違う」と感じているなら、この記事が解決への第一歩となるはずです。一人で抱え込まず、まずはあなたに与えられた権利について知ることから始めましょう。消費者トラブルの全体像については、当事務所サイト内の関連記事で体系的に解説しています。

【解決事例】白アリ駆除の高額請求。不実告知を主張し全額返金へ

法律の話に入る前に、まずは当事務所で実際に解決した事例をご紹介します。不実告知という法律が、いかに私たちの身近なトラブルを解決する力を持っているかを感じていただければと思います。

ある日、ご相談に来られた方は、高額な白アリ駆除の契約をしてしまい、深く悩んでおられました。業者から「このままでは白アリで家が倒壊する危険がある。すぐに駆除しないと大変なことになる」と強く言われ、不安に駆られてその場で契約し、費用も支払ってしまったとのことでした。

しかし、後からご家族が調べたところ、本当に白アリがいたのかどうか疑わしい点が浮かび上がってきたのです。「もしかして、不要な工事だったのではないか…」という疑念が膨らみ、当事務所の扉を叩かれました。

白アリ駆除業者から不安を煽る説明を受け、困惑している女性のイラスト

お話を伺い、私はすぐに「不実告知」にあたる可能性が高いと判断しました。業者の「このままでは建物が倒壊する危険がある」という説明は、消費者の不安を煽り、契約を急がせるためのものです。もし白アリが実際にはいなかったのであれば、それはまさに「重要事項について事実と異なることを告げた」ことになります。

具体的には、消費者契約法には「生命、身体、財産その他の重要な事項についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」について嘘を告げることを禁じる規定があります(消費者契約法4条5項3号)。今回のケースは、まさにこの点に該当すると考えられました。

そこで、私はすぐさま業者に対し、不実告知を理由に契約の取消しを通知し、駆除代金の全額返還を求める内容証明郵便を送付しました。弁護士が法的な根拠を明確に示して交渉した結果、業者は私たちの主張を認め、支払われた代金は全額返金されることになったのです。

ご相談者様からは「本当に安心しました。先生に相談してよかったです」と、心から喜んでいただけました。この事例のように、たとえ契約書にサインしてしまっても、諦める必要はありません。法律は、正しく使えば消費者の強い味方になるのです。

消費者契約法における「不実告知」とは?

さて、先の事例でも触れた「不実告知」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

不実告知とは、簡単に言うと「事業者が契約を結ばせる目的で、重要な事柄について事実と違うことを告げること」を指します。これは、消費者契約法という法律で明確に定められています。

消費者契約法は、専門知識や情報量、交渉力で勝る事業者と、そうではない消費者との間にある「格差」を埋め、不利益な契約を結ばされた消費者を保護するために作られました。事業者の不適切な勧誘行為によって消費者が誤解したり、困惑したりした場合には、契約を取り消す権利を認めているのです。

つまり、事業者の「嘘の説明」を信じて契約してしまった消費者を救済するための、いわば切り札ともいえる制度が、この不実告知による取消権なのです。

参照:e-Gov法令検索「消費者契約法」

民法の「詐欺」取消との違いは?なぜ不実告知が有利なのか

「嘘の説明で契約させられたなら、民法の『詐欺』でも取り消せるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。確かにその通りですが、実は「詐欺」を理由に契約を取り消すのは、非常にハードルが高いのです。

民法の詐欺(民法96条1項)で契約を取り消すためには、消費者が「事業者に騙す意図(故意)があったこと」を証明しなければなりません。しかし、事業者の心の中を証明するのは極めて困難です。「騙すつもりはなかった、自分もそう信じていた」と言われてしまえば、それ以上追及するのは難しくなります。

一方で、消費者契約法の「不実告知」(消費者契約法4条1項1号)は、事業者に騙すつもりがなかったとしても、客観的に告げた内容が事実と異なっていれば成立します。消費者は、事業者の「故意」まで証明する必要がないのです。

この点が、消費者契約法が消費者にとって非常に有利で、使いやすい武器となる最大の理由です。これにより、多くの消費者が泣き寝入りすることなく、正当な権利を主張しやすくなっています。例えば、返金されない代金の債権回収を進める上でも、このハードルの低さは大きなメリットとなります。

不実告知による契約取消が認められる4つの要件

では、実際に不実告知を理由に契約を取り消すためには、どのような条件が必要なのでしょうか。法律上、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。ご自身の状況と照らし合わせながら、一つずつ確認してみてください。

不実告知による契約取消が認められる4つの要件(勧誘、不実告知、誤認、因果関係)をまとめた図解

要件①:事業者が契約締結のために「勧誘」した

まず、その不実告知が、事業者があなたと契約を結ぶことを目的に行った「勧誘」の過程であったことが必要です。この「勧誘」には、店舗での直接的なセールストークはもちろん、テレビCMやインターネット広告、ウェブサイト上の表示、電話での営業活動など、事業者が消費者に契約を働きかけるあらゆる行為が広く含まれます。

要件②:「重要事項」について事実と異なることを告げた

次に、事業者が告げた嘘の内容が、契約における「重要事項」に関するものでなければなりません。重要事項とは、簡単に言えば「契約をするかどうかを決める上で、消費者が通常、判断の基礎とするような大切な事柄」のことです。例えば、商品の品質や性能、価格、支払い条件などがこれにあたります。どのようなものが重要事項にあたるかについては、後ほど詳しく解説します。

要件③:告げられた内容が事実だと「誤認」した

事業者の嘘の説明を、あなたが「事実だ」と信じてしまった状態(誤認)も要件となります。「こんなに高性能なら買おう」「この条件なら安心だ」というように、事業者の説明によって消費者が判断を誤ってしまったことが、取り消しの正当な理由として認められるのです。

要件④:誤認したことによって契約を結んだ(因果関係)

最後に、その「誤認」があったからこそ契約を結んだ、という因果関係が必要です。「もし本当のことを知っていたら、この契約はしなかっただろう」と言える関係性が求められます。事業者の嘘の説明と、あなたの契約締結との間に、直接的なつながりがあることが重要なのです。

【類型別】どのような説明が「重要事項の不実告知」にあたるのか?

不実告知が成立するかの最大のポイントは、事業者の嘘が「重要事項」に関するものだったかどうかです。消費者契約法では、この重要事項をいくつかの類型に分けて定めています。ご自身のケースがどれに当てはまるか、具体的な例と共に見ていきましょう。

参照:消費者庁「消費者契約法」

① 商品の品質や内容に関する嘘(例:産地偽装、性能の誇張)

物品、権利、サービスといった契約の目的となるもの自体の品質、内容、効果、用途などに関する嘘がこれにあたります(消費者契約法4条5項1号)。

  • 「この中古車は事故歴・修復歴はありません」と説明されたが、実際にはあった。
  • 「100%国産の素材を使用」と表示されていたが、外国産の素材が使われていた。
  • 「このサプリを飲めば、運動しなくても必ず痩せます」と言われたが、全く効果がなかった。
  • 「Aランクの宝石です」と説明されたが、実際はもっと低いランクのものだった。

② 価格や支払い条件に関する嘘(例:追加料金の説明不足)

代金の額や支払い時期・方法、キャンセル料といった、金銭に関する取引条件についての嘘も重要事項とされます(消費者契約法4条5項2号)。お金に直接関わる部分であり、トラブルが非常に多い類型です。

  • 「月々1万円ポッキリです」と言われたのに、後から高額な手数料や年会費を請求された。
  • 「今日契約すれば、この価格が最終価格です」と言われたが、後日もっと安いキャンペーンが行われていた。
  • 解約時の条件について、「いつでも無料で解約できます」と説明されたが、実際には高額な違約金が定められていた。

こうした金銭トラブルは、時に架空請求や不当請求といった悪質なケースに発展することもあります。

③ 消費者の不利益になる事実を故意に告げなかった(不利益事実の不告知)

これは、嘘を告げる「不実告知」とは少し異なりますが、関連性が高いためここで解説します。事業者が、消費者にとって不利益となる重要な事実を知りながら、わざと伝えなかった場合も契約を取り消せます(消費者契約法4条2項)。

  • 日当たりの良さを強調してマンションを販売したが、すぐ隣に高層ビルが建つ計画があることを知っていたのに伝えなかった。
  • 「静かな環境です」と説明して土地を売ったが、近隣に騒音を出す工場があることを隠していた。

この「不利益事実の不告知」が成立するためには、事業者が「故意に」告げなかったことが必要です。しかし、消費者の利益になることだけを積極的にアピールし、都合の悪い情報を隠す手口は後を絶ちません。

④ 危険を回避するために必要だと誤解させる嘘(法改正で追加)

冒頭の白アリ駆除の事例もこの類型です。消費者の不安を煽り、「このままだと大変なことになる」と思わせて、本来は不要な契約を結ばせる手口です(消費者契約法4条5項3号)。これは法改正によって対象が広がり、より消費者が保護されるようになりました。

  • 「このままだと屋根が崩落します」と嘘を言って、高額なリフォーム契約を結ばせる。
  • パソコンの画面に偽の警告を出し、「今すぐ対応しないとウイルスに感染して個人情報が漏洩する」と脅して、不要なソフトを契約させる。

契約を取り消したらどうなる?代金返還までの流れと時効

不実告知の要件を満たし、契約を取り消す権利(取消権)を行使した場合、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。ここからは、実際に行動を起こすためのステップと注意点を解説します。

ステップ1:事業者への意思表示(内容証明郵便の活用)

まず、事業者に対して「不実告知があったため、消費者契約法に基づき契約を取り消します」という意思を明確に伝える必要があります。

このとき、電話や口頭で伝えるだけでなく、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を差し出したか」を日本郵便が証明する「内容証明郵便」をお勧めします。なお、内容証明郵便だけでは相手が受け取ったこと(配達されたこと)までは証明できないため、必要に応じて配達証明の利用も検討しましょう。

内容証明郵便を作成している弁護士の手元

ステップ2:代金の返還と商品の返却(原状回復)

契約が有効に取り消されると、その契約は「初めから無かったこと」になります。そして、お互いに受け取ったものを元に戻す義務(原状回復義務)が生じます。

  • 消費者:支払った代金の全額返還を事業者に請求できます。
  • 事業者:消費者に引き渡した商品を返してもらう権利があります。

消費者は、受け取った商品を返還する義務があります。商品をそのまま返せる場合は原物を返還しますが、すでに使用・消費して原物の返還ができない場合には、消費した分の価値の返還が問題となることがあります。具体的な返還範囲は事案によって左右されるため、早めに専門家へ相談することをお勧めします。

注意!取消権には時効があります

非常に重要な注意点として、契約を取り消す権利には行使できる期間(取消権の行使期間)があることを覚えておいてください。この期間を過ぎてしまうと、たとえ不実告知の要件を満たしていても、権利を主張できなくなってしまいます。

取消権の行使期間は以下の2つの期間で定められており、どちらか早い方が到来した時点で取り消せなくなります。

  1. 誤認に気づいた時(追認をすることができる時)から1年間
  2. 契約を締結した時から5年間

「おかしいな」と気づいたら、悩んでいるうちにあっという間に1年が過ぎてしまう可能性があります。取消権の行使期間を過ぎてしまうと、たとえ不実告知の要件を満たしていても、取り消しを主張できなくなってしまいます。

事業者が返金に応じない場合や、一人での対応が不安な方へ

ここまで解説してきたように、消費者契約法は消費者のための強力な武器です。しかし、理論上は契約を取り消せると分かっていても、いざ事業者に連絡すると、「契約書にサインしたでしょう」「そんなことは言っていない」などと反論され、返金にすんなり応じないケースも少なくありません。

相手が悪質な事業者であるほど、高圧的な態度に出たり、話をはぐらかしたりして、消費者が諦めるのを待っているのです。個人でこうした事業者と交渉するのは、精神的にも非常に大きな負担となります。

もし、事業者との交渉がうまくいかない場合や、そもそも一人で対応することに不安を感じる場合は、法律の専門家である弁護士にご相談ください。

弁護士があなたの代理人となることで、以下のようなメリットがあります。

  • 精神的な負担の軽減:面倒でストレスの多い事業者との交渉をすべて任せられます。
  • 法的な根拠に基づく的確な交渉:感情的な言い争いを避け、法律に基づいた冷静かつ有利な交渉が期待できます。
  • 最終的な金銭回収の実現:交渉が決裂した場合でも、訴訟などの法的手続きにスムーズに移行し、権利の実現を目指せます。

「騙されたかもしれない」という悔しい思いを、泣き寝入りで終わらせてはいけません。適切な対応を取れば、支払ったお金を取り戻せる可能性は十分にあります。まずは勇気を出して、専門家への相談という一歩を踏み出すことが、解決への最も確実な道筋です。

当事務所では、あなたに合った弁護士選びができるよう、親身にお話を伺うことを第一に考えております。どんな些細なことでも構いませんので、まずはお気軽にご連絡ください。

消費者契約トラブルの相談予約(お問い合わせ)

keyboard_arrow_up

08056321002 問い合わせバナー LINE予約はこちら