後遺障害の逸失利益|計算方法と3つの重要要素を弁護士が解説

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後遺障害の逸失利益とは?将来の収入を守るための重要知識

交通事故の後遺障害によって、以前のように働けなくなってしまった…。将来の収入がどうなるのか、不安で夜も眠れないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんなとき、被害者の将来の収入減を補うために請求できるのが「後遺障害逸失利益」です。

これは、「もし交通事故に遭わなければ、将来得られたはずの収入」に対する正当な補償です。事故のせいで失われてしまった未来の収入を、加害者側に請求する権利があなたにはあります。

しかし、保険会社から提示された金額を見て、「本当にこれだけ?」「計算の根拠がよくわからない」と、さらなる疑問や不信感を抱くケースは少なくありません。そのように感じるのは、決してあなただけではありませんし、当然のことなのです。

この記事では、後遺障害の逸失利益がどのような計算で決まるのか、その仕組みと3つの重要な要素を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。読み終える頃には、保険会社の提示額のどこに問題があるのか、そして、あなたが受け取るべき適正な金額はいくらなのか、その考え方が明確になるはずです。

逸失利益の計算は3つの要素で決まる!基本の計算式を理解しよう

後遺障害の逸失利益は、一見すると複雑に思えるかもしれませんが、実は3つの基本的な要素の掛け算で成り立っています。まずは、この全体像を掴むことが大切です。

【逸失利益の計算式】
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

難しく感じるかもしれませんが、要は以下の3つの要素で決まります。

  • ① 収入額はいくらか(基礎収入)
  • ② 後遺障害でどれだけ働けなくなったか(労働能力喪失率)
  • ③ その影響はいつまで続くのか(労働能力喪失期間)
後遺障害逸失利益の計算式を構成する3つの要素(基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間)を分かりやすく図解したインフォグラフィック。

この3つの数字が大きくなれば、受け取れる逸失利益の金額も大きくなります。保険会社の提示額では、各項目(基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間)が争点となり、結果として低い前提で算定されていることがあります。だからこそ、一つひとつの要素が何を意味し、どのように決まるのかを正しく理解しておくことが、ご自身の権利を守る第一歩となるのです。それでは、各要素を詳しく見ていきましょう。

このテーマの全体像については、交通事故の慰謝料は弁護士依頼で増える?増額の仕組みを解説で体系的に解説しています。

要素①:基礎収入|あなたの年収をどう評価するか

「基礎収入」とは、逸失利益を計算する上での土台となる事故前の収入額のことです。原則として事故前年の現実収入を基準にしますが、職業や立場によってその算定方法は異なります。

  • 会社員(給与所得者): 原則として、事故前年の源泉徴収票に記載されている「支払金額」(税金などが引かれる前の総支給額)が基礎収入となります。
  • 自営業者・個人事業主: 事故前年の確定申告書に記載された「所得金額」が基準です。ただし、事業維持のために必要な固定経費(地代家賃など)は、所得に加算して基礎収入とすることがあります。
  • 専業主婦(主夫): 現実の収入はありませんが、家事労働は経済的に評価されるべきものと考えられています。そのため、厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の女性労働者の全年齢平均賃金額を基礎収入として計算するのが一般的です。これは、パートタイマーの方で、収入が平均賃金を下回る場合にも適用されることがあります。主婦の休業損害も同様の考え方で計算されます。
  • 学生・若年者: 事故当時に収入がなかったり、低かったりする場合でも、将来的に得られるであろう収入を基準に考えます。原則として賃金センサスの男女別・全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。

注意したいのは、保険会社が基礎収入を低く見積もってくるケースです。例えば、事故当時まだ若かった被害者に対し、「事故前年の実績」だけを基に低い基礎収入を提示してくることがあります。しかし、弁護士が交渉すれば、将来の昇給の可能性などを主張し、賃金センサスを基準としたより高い基礎収入を認めさせることが可能です。

要素②:労働能力喪失率|後遺障害が仕事に与える影響度

「労働能力喪失率」とは、後遺障害によって、事故前と比べてどのくらい働く能力が失われたかをパーセンテージで示したものです。これは、認定された後遺障害の等級に応じて、あらかじめ目安となる数値が定められています。

後遺障害等級労働能力喪失率後遺障害等級労働能力喪失率
第1級100%第8級45%
第2級100%第9級35%
第3級100%第10級27%
第4級92%第11級20%
第5級79%第12級14%
第6級67%第13級9%
第7級56%第14級5%
後遺障害等級別の労働能力喪失率

例えば、ご相談の多い「むちうち」で認定されることが多い後遺障害14級の場合、労働能力喪失率は「5%」とされています。これは、「後遺障害により労働能力が5%低下した」と評価されることを意味します。

ただし、この表はあくまで目安です。弁護士は、被害者の方の具体的な仕事内容や、後遺障害が業務に与える影響を詳細に立証することで、表の数値を上回る喪失率を主張できる場合があります。「等級が決まっているから」と諦めず、ご自身の状況を専門家に伝えることが重要です。

要素③:労働能力喪失期間とライプニッツ係数|いつまで影響が続くか

「労働能力喪失期間」とは、後遺障害による収入減の影響が、将来にわたっていつまで続くかという期間のことです。原則として、治療を続けてもこれ以上改善しないと判断された日(症状固定日)から、就労可能な年齢である「67歳」までとされています。

ただし、これにはいくつかの例外があります。

  • 67歳を超える高齢者の場合: 症状固定時の年齢が67歳を超えている方は、「平均余命の2分の1」を労働能力喪失期間とすることが一般的です。
  • むちうち(14級)などの場合: 神経症状である12級や14級の場合、症状が時間とともに回復・順応していくと考えられているため、期間が制限される傾向にあります。特に14級では「5年程度」に制限されることが多いのが実情です。

そして、この期間に掛け合わせるのが「ライプニッツ係数」です。これは、将来にわたって分割で受け取るはずだったお金を、示談時に一時金として前倒しで受け取るために、将来の利息分を割り引く(中間利息を控除する)ための調整値です。労働能力喪失期間が長くなるほど、この係数も大きくなります。

より詳しいライプニッツ係数については、国土交通省が公表している資料もご参照ください。
参照:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省

【争点解説】保険会社が逸失利益を低く提示する手口と弁護士の反論

ここまで逸失利益の計算方法を解説してきましたが、なぜ保険会社の提示額は低くなりがちなのでしょうか。それは、これまで説明した3つの要素(①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間)のそれぞれで、保険会社が自社に有利な解釈で計算しているケースが多いからです。

しかし、私たち弁護士は、法律と過去の裁判例に基づき、そうした主張に的確に反論していきます。

弁護士の視点:逸失利益の交渉における3つのポイント

逸失利益の算定は、単に計算式に数字を当てはめるだけではありません。労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進や失業の可能性、日常生活での不便さなどを総合的に考慮して行われます。

  1. 基礎収入:原則は事故前の収入ですが、若年者など将来的に平均賃金程度の収入を得られる蓋然性(がいぜんせい)が高い場合は、賃金センサスを基礎収入として主張します。保険会社が低い現実収入に固執しても、将来の可能性を立証することで増額を目指します。
  2. 労働能力の低下の程度:労働能力喪失率表はあくまで参考です。被害者の方の職業、年齢、後遺障害の具体的な症状や仕事への影響などを丁寧に主張し、実態に即した喪失率を認めさせる交渉を行います。
  3. 労働能力喪失期間:終期は原則67歳ですが、職種や能力によってはそれ以降も働けることを主張し、延長を求めることもあります。逆に、むちうちで保険会社が「3年」と主張してきても、私たち弁護士は最低でも「5年」を基準に交渉し、適正な期間を確保できるよう尽力します。

特に注意!むちうち(14級9号)の労働能力喪失期間

交通事故で最も多い後遺障害の一つが、むちうち(正式には「外傷性頚部症候群」など)による神経症状で、後遺障害14級9号に認定されるケースです。

この場合、保険会社が「むちうちの喪失期間は3年が相場です」あるいは「長くて5年ですね」といった主張をしてくることが非常に多くあります。しかし、この主張を鵜呑みにしてはいけません。

確かに、裁判実務上は「5年」が一つの目安とされています。しかし、それは絶対的なルールではありません。症状の具体的な内容や、仕事への影響をきちんと立証することで、5年を超える期間が認められた裁判例も存在します。

弁護士が、後遺障害の逸失利益について悩む相談者に、解決策を提示し、安心させている様子のイラスト。

「相場だから」という保険会社の言葉に安易に同意せず、ご自身の症状が仕事にどれほど深刻な影響を与えているかを、諦めずに主張することが大切です。

高齢者(67歳超)でも逸失利益は請求できるのか?

「もう67歳を過ぎているから、逸失利益はもらえないのでは?」あるいは、保険会社から「就労可能年数を過ぎているので逸失利益はゼロです」と言われ、そう思い込んでしまっている方もいらっしゃいます。しかし、それは明確な誤りです。

年齢に関わらず、働く意欲と能力があり、現に収入を得ていた方であれば、逸失利益を請求する権利があります。

高齢者の場合、労働能力喪失期間は原則として「平均余命の2分の1」を基準に計算します。例えば、70歳の男性の平均余命が約16年であれば、その半分の約8年間が労働能力喪失期間として認められる可能性があります。

もちろん、請求するためには「就労の蓋然性(がいぜんせい)」、つまり、事故がなければ将来も働き続けていたであろうことを証明する必要があります。具体的には、以下のような資料が有効な証拠となります。

  • 事故前の確定申告書や給与明細
  • 再就職活動の記録
  • 家族の証言
  • 健康状態を示す診断書

また、年金収入の扱いは年金の種類や事案により判断が分かれるため、一律に「含める/含めない」とは言い切れません。保険会社から「高齢だから逸失利益はゼロ」と言われた場合でも、就労の蓋然性(事故がなければ働き続けていた可能性)を踏まえて個別に検討する必要があります。

逸失利益の計算で悩んだら、まず弁護士にご相談ください

ここまでご覧いただいたように、後遺障害の逸失利益の計算は非常に専門的で、多くの争点を含んでいます。保険会社が提示する金額は、法的に認められるべき最も低い基準(自賠責保険基準)や、それに少し上乗せした程度の任意保険会社独自の基準で計算されていることがほとんどです。

ご自身で交渉しようとしても、専門知識や判例を知らないままでは、保険会社の担当者のペースで話が進められ、気づかないうちに不利益な条件で合意してしまうリスクが非常に高いと言わざるを得ません。

私たち弁護士にご依頼いただければ、

  1. 裁判例等で用いられる基準(いわゆる弁護士基準)での請求: 過去の裁判例等で用いられる考え方に基づき、逸失利益を再計算して請求します。
  2. 煩雑な交渉の一任: 保険会社とのやり取りはすべて弁護士が窓口となり、精神的なご負担を大幅に軽減します。
  3. 増額となる場合があります: 事案に応じて主張・立証を行うことで、賠償金が当初の提示額から増額となる場合があります。

福岡フォワード法律事務所は、ただ守るだけではなく、ご依頼者様の未来を前に進めるため、積極的に動いて闘う「攻めの弁護」を信条としています。保険会社の提示額に少しでも疑問を感じたら、一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。あなたの正当な権利を守り、未来への一歩を進められるよう、全力でサポートするよう努めます。

後遺障害逸失利益の無料相談(お問い合わせ)

交通事故の賠償金は、弁護士に依頼することで増額する可能性が十分にあります。

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