このページの目次
はじめに:少年事件は「罰」ではなく「更生」を目指す手続きです
お子様が事件を起こしてしまい、今この瞬間も、ご家族の皆様は計り知れない不安と混乱の中にいらっしゃることと存じます。「これからどうなってしまうのか」「子どもの将来は閉ざされてしまうのではないか」――そのようなお気持ちで情報を探されているのではないでしょうか。
まず、最も大切なことをお伝えします。少年事件の手続きは、成人の刑事事件とはその目的が根本的に異なります。成人に対する手続きが「犯した罪に対して罰を与える」ことを主眼に置くのに対し、少年事件は少年の「立ち直り(更生)」を最大の目的としています。これは、少年法の第一条にも「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずること」を目的とすると定められている、日本の少年司法の基本理念です。
つまり、手続きのゴールは罰することではなく、お子様が再び過ちを繰り返さず、社会の一員として健全に成長していけるよう、社会全体でサポートしていくことにあります。
この記事では、少年事件の全体像(手続きの流れや処分の種類)、そしてお子様の未来のために親権者として何をすべきかを、専門家の立場から分かりやすく解説します。この記事が、暗闇の中の道標となり、お子様の更生を支えるための第一歩となれば幸いです。
【図解】少年事件の手続きの流れ|逮捕された場合・在宅の場合
「これから、一体どのような手続きが進んでいくのか」――これは、ご家族が最初に抱く大きな疑問でしょう。少年事件の手続きは、お子様の身柄が拘束されているかどうかで、その後の流れが大きく二つに分かれます。ここでは、「逮捕された場合」と「在宅で捜査が進む場合」の2つのパターンを比較しながら、全体像を解説します。

①逮捕・勾留された場合の流れ
お子様が警察に逮捕されてしまった場合、手続きは迅速に進みます。まず、逮捕後最大72時間以内に、検察官は勾留(引き続き身柄を拘束して捜査すること)を請求するか、あるいは家庭裁判所に事件を送るかを判断します。
検察官が勾留を請求し、裁判官がそれを認めると、原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、合計で最大20日間の勾留が続く可能性があります。この間、警察や検察官による取調べが行われます。
成人の事件と大きく異なるのは、(少年が罪を犯した場合など)刑事手続とは別に、原則として家庭裁判所の手続に付される点です(いわゆる全件送致主義)。
家庭裁判所に送致された後、裁判官は「観護措置」を取るかどうかを決定します。観護措置とは、少年鑑別所でお子様を預かり、心身の状態や非行に至った原因などを専門家が調査する手続きで、収容期間は原則として2週間です(必要がある場合は、裁判所の決定により更新されることがあります)。この期間、ご家族との面会が制限されることもあります。
そして最終的に、家庭裁判所で「少年審判」が開かれ、お子様の処分が決定されます。
②在宅事件の場合の流れ
一方、逮捕されずに捜査が進むのが在宅事件です。この場合、お子様は学校に通うなど、基本的には普段通りの生活を送りながら、警察や検察官からの呼び出しに応じて取調べを受けることになります。
捜査が終了すると、逮捕された場合と同様に事件は家庭裁判所に送致されます。その後、家庭裁判所調査官がお子様やご家族と面談を行い、非行の原因や生活環境などについて調査を進めます。在宅事件では身柄拘束がないため、観護措置が取られることは比較的少ないですが、調査の結果、必要と判断されれば少年鑑別所に収容される可能性もゼロではありません。
調査官の調査が終わると、審判を開くかどうかが判断され、開かれる場合は審判の期日が指定されます。在宅事件は身体的な拘束がない反面、捜査や調査が長期化し、最終的な処分が決まるまで数ヶ月以上かかるケースも少なくありません。
少年審判で決まる処分の種類と内容
少年審判で下される処分は、お子様のその後の人生を大きく左右します。重要なのは、これらの処分の多くは「前科」にはならないという点です。あくまで教育的な観点から、少年の更生に最も適した措置が選択されます。
ここでは、処分の内容を、重いものから順に解説します。
最も重い処分:検察官送致(逆送)と少年院送致
検察官送致(逆送)は、最も重い処分です。これは、家庭裁判所が「保護処分ではなく、刑事罰を科すのが相当」と判断した場合に、事件を再び検察官に戻す手続きを指します。原則として16歳以上で故意に被害者を死亡させた事件などが対象となり、逆送されると成人と同様の刑事裁判を受けることになります。
少年院送致は、社会内での更生が困難だと判断された場合に下される処分です。少年院は刑務所とは異なり、あくまで更生を目的とした矯正教育施設です。年齢や心身の状況に応じて第一種から第五種までの少年院に分類され、そこで社会復帰に向けた指導や職業訓練などが行われます。
社会内での更生を目指す:保護観察
保護観察は、少年を施設に収容せず、社会生活を送りながら更生を目指す処分です。多くの事件で、弁護活動の現実的な目標となります。保護観察中は、保護司や保護観察官と定期的に面談し、生活の指導や助言を受けます。定められた遵守事項を守りながら生活し、社会の一員としての責任感を養っていくことが求められます。
目指すべき最良の結果:不処分・審判不開始
弁護活動における最大の目標は、不処分または審判不開始です。
- 審判不開始:家庭裁判所調査官の調査の結果、審判を開くまでもなく手続きを終了する決定です。非行が極めて軽微であったり、すでに十分な更生が見られたりする場合に選択されます。
- 不処分:審判は開かれたものの、裁判官が「処分を下す必要はない」と判断した場合の決定です。被害者との示談が成立し、お子様自身が深く反省していること、ご家族の監督体制が整っていることなどが示された場合に下されます。
これらは、いずれもお子様の更生が期待できると判断された結果であり、手続が早期に終結したり、保護処分が選択されなかったりする点で、望ましい結果の一つと言えます。
処分の分かれ道となる「要保護性」と親の役割
少年審判でどのような処分が下されるか、その運命を分ける最も重要なキーワードが「要保護性(ようほごせい)」です。
これは法律用語で少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、
- お子様が将来、再び非行に陥る危険性があるか
- その危険性をなくすために、保護処分によるサポートが必要か
という2つの視点から判断されるものです。家庭裁判所は、事件そのものの重大性だけでなく、この「要保護性」を非常に重視します。
そして、この要保護性の判断に絶大な影響を与えるのが、親権者の監督能力と家庭環境です。裁判官や調査官は、「この親御さんになら、お子様の監督を任せられるか」「この家庭環境で、お子様は立ち直ることができるか」という点を厳しく見ています。
具体的には、お子様の非行と真摯に向き合い、二度と繰り返させないための具体的な監督計画を立て、学校や職場と連携して生活環境を整えるといった、ご家族の主体的な姿勢が求められます。親がどう動くかによって、お子様の処分が大きく変わる可能性があるのです。これは、少年事件が「家族の事件」でもあると言われる所以です。

少年事件における弁護士(付添人)の具体的な弁護活動
少年事件において、弁護士は「付添人(つきそいにん)」として活動します。付添人は、単に法律的な手続きを代行するだけでなく、お子様の最も身近な理解者となり、更生への道を共に歩むパートナーです。
具体的な活動は多岐にわたります。
- 逮捕直後の接見と取調べ対応:逮捕直後から本人と面会(接見)し、精神的な支えとなりながら、取調べに対する適切なアドバイスを行います。
- 身柄解放活動:勾留や観護措置といった身柄拘束を回避・短縮するための活動を迅速に行います。
- 被害者との示談交渉:被害者の方への謝罪と被害弁償を行い、円満な示談成立を目指します。これは処分の軽減に極めて重要です。
- 家庭環境の調整と要保護性を下げる活動:ご家族と協力し、具体的な監督計画の作成や学校との連携などをサポートし、「要保護性がない(低い)」ことを裁判所に説得的に主張します。
- 少年審判での主張・立証:審判に同席し、お子様やご家族の意見を代弁し、更生の意欲や環境が整っていることを具体的に主張・立証します。
弁護士の介入が早いほど、取れる選択肢は多くなり、お子様にとってより良い未来を切り拓く可能性が高まります。
福岡フォワード法律事務所の解決事例
ここで、当職が実際に担当した傷害事件が「不処分」という最良の結果で終結した事例をご紹介します。このケースは、弁護士の具体的な活動が、いかにして少年の未来を好転させ得るかを示しています。
ご依頼いただいたのは、お子様が傷害事件を起こしてしまったというご両親でした。まず私が着手したのは、少年本人との対話です。少年事件では、本人が事件をどう捉え、何を考えているのかを深く理解することが、すべての出発点となります。
そして、処分を有利に進める上で不可欠なのが、被害者の方への被害弁償と示談の成立です。私は直ちに被害者のご両親に連絡を取り、お子様に代わって真摯に謝罪を重ねました。その結果、幸いにもご理解をいただき、無事に示談を締結することができました。
しかし、弁護活動はそこで終わりません。私は少年本人とそのご両親と何度も面談を重ね、家庭裁判所の調査官が作成した社会記録も徹底的に分析しました。そこから調査官が少年のどこに問題意識を持っているかを見抜き、審判で的確な反論ができるよう準備を進めました。
迎えた少年審判の日。私は、少年の性格やご家族のサポート体制といった具体的な事実を挙げながら、「この少年には、将来再び非行に陥る危険性=要保護性がない」ことを、説得的に主張しました。
結果として、裁判官は早期に示談が成立している点を高く評価し、保護観察すら付かない「不処分」の決定を下しました。お子様は、何らの制約もなく、すぐに元の生活に戻ることができたのです。
この事例は、迅速な示談交渉と、調査官の視点を先読みした上での的確な主張が、いかに重要であるかを示しています。
お子様のために親権者が今すぐすべきこと【Q&A】
最後に、不安と混乱の中にいるご家族が「今すぐ何をすべきか」をQ&A形式でまとめました。
Q1. まず何から手をつければいいですか?
A1. できるだけ早めに弁護士へ相談してください。
少年事件は早期の対応が重要になることがあります。情報が錯綜する中でご家族だけで判断するのは非常に困難です。まずは専門家である弁護士に連絡し、正確な状況把握と今後の見通しについてアドバイスを受けてください。
Q2. 弁護士にはいつ相談すべきですか?
A2. できるだけ早めに、状況が分かった段階で相談するのが望ましいです。
理想は警察から連絡があった直後です。早期に相談することで、身柄拘束に関する意見書の提出や、今後の見通し整理など、取り得る対応の幅が広がることがあります。「もう少し様子を見てから…」と迷う間に、手続きが進むこともあるため、早めの相談が安心につながります。
Q3. 学校には連絡すべきですか?
A3. 弁護士に相談してから判断してください。
学校への報告は慎重に行うべきです。事件の内容や学校の方針によっては、退学などの厳しい処分につながる可能性もあります。弁護士が間に入ることで、学校側との交渉を有利に進められるケースも少なくありません。ご自身で判断される前に、必ず弁護士にご相談ください。
Q4. 被害者の方へはどう対応すればいいですか?
A4. 直接の連絡は避け、弁護士に任せてください。
謝罪したいというお気持ちは当然ですが、当事者同士での接触は、かえって感情的な対立を深めてしまうリスクがあります。被害者の方への謝罪や示談交渉は、状況に応じて、弁護士を通じて行うことで、連絡方法や言葉選びなどの面でトラブルを避けやすくなることがあります。
お子様の未来を守るために、ご家族ができる最善の行動は、信頼できる専門家を一日も早く味方につけることです。福岡フォワード法律事務所は、お子様とご家族に寄り添い、全力でサポートすることをお約束します。どうか一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
